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ワールドシリーズ優勝から1週間経たずにGMが退団。1年間の延長契約を断る

宇根夏樹ベースボール・ライター
左から、J.クリック、J.クレイトン、D.ベイカー、市長 May 4, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ヒューストン・アストロズは、5年ぶり2度目のワールドシリーズ優勝を飾った。それから1週間経たずに、新たなGMを探すことになった。

 オーナーのジム・クレインは、契約が満了したダスティ・ベイカー監督とジェームズ・クリックGMに、いずれも1年間の延長契約を申し出た。ベイカーはそれを受け入れ、クリックは断った。

 ベイカーとクリックは、それぞれ、2020年の1月下旬と2月上旬に、アストロズの監督とGMに就任した。それまで監督とGMだった、A.J.ヒンチ(現デトロイト・タイガース監督)とジェフ・ルーノーは、発覚したサイン盗みにより、MLB機構に1シーズンの停職処分を科された。アストロズは、すぐに2人を解雇し、後任にベイカーとクリックを招いた。

 ヒンチとルーノーの最後の3シーズン(2017~19年)と、ベイカーとクリックの3シーズン(2020~22年)は、どちらも、ワールドシリーズ優勝、リーグ優勝、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ敗退が1度ずつだ。

 ベイカーは、アストロズの前に4チームで采配を振ってきた。どのチームでも地区優勝を果たし、サンフランシスコ・ジャイアンツでは、2002年にリーグを制している。今年は、史上12人目の2000勝に到達し、監督としては初のワールドシリーズ優勝も成し遂げた。現在の年齢は73歳だ。一方、クリックは44歳。アストロズに来るまで、GMあるいは編成のトップを務めたことはなかった。その前は、タンパベイ・レイズのフロントにいた。

 クリックは、この3年間の自分の働きに対する、オーナーの評価が低い、と判断したのだろう。今年限りで勇退してもおかしくなかったベイカーはさておき、これからキャリアを築いていこうとするクリックにとって、1年契約は短すぎるということだ。

 先月下旬に「リーグ連覇のチームは、すでに球団にいない「ハリー・ポッター」が作り上げた!?」で書いたとおり、ロースターには、ルーノーがGMを務めていた時期にアストロズへやってきた選手が多い。そのことも、クリックの評価が上がらなかった理由の一つ――クリック自身のせいではないが――だと思われる。

 なお、アストロズのフロントからいなくなるのは、クリックだけではない。先月下旬、アシスタントGMの一人だったピート・プティラは、サンフランシスコ・ジャイアンツのGMに就任――――ジャイアンツの編成責任者はファーハン・ザイディのまま――し、中南米の選手との契約に手腕を振るってきたオズ・オカンポは、マイアミ・マーリンズのアシスタントGMとなった。また、ESPNのジェフ・パッサンによると、クリックの退団直後、こちらもアシスタントGMだったスコット・パワーズは、アストロズに解雇されたという。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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