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リーグ連覇のチームは、すでに球団にいない「ハリー・ポッター」が作り上げた!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェフ・ルーノー(中央)Nov 12, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ヒューストン・アストロズは、ここ8年に7度、ポストシーズンに進出している。進めなかったのは、2016年だけ。その翌年はワールドシリーズを制し、2019年と2021~22年もリーグ優勝を飾っている。

 今日のアストロズを作り上げたのは、前GMのジェフ・ルーノーと言ってもいいかもしれない。ルーノーは、2011年12月から2020年1月までGMを務め、眼鏡をかけた風貌とその手腕――魔法使いのような(?)――から、「ハリー・ポッター」とも称された。

 今年のワールドシリーズで、ロースターに名を連ねる26人のうち、ルーノーがいなくなってからアストロズに加わった選手は7人、ルーノーの就任前からアストロズにいたのはホゼ・アルトゥーベだけだ。あとの18人は、ルーノーの在任中にアストロズへやってきた。第1戦に先発出場した10人中、アルトゥーベと今夏に加入したトレイ・マンシーニを除く8人は、ルーノーが手に入れた選手だ。

 ルーノーは、FA市場に出ている大物を買い漁ったわけではない。18人の内訳は、ドラフト指名が7人、ドミニカンなどアマチュアFAとの契約が5人、トレードによる獲得が5人、FAとの契約は1人だ。FAにしても、通常のFA市場からの入手ではない。横浜DeNAベイスターズを経て、2016年の夏にキューバから亡命したユリ・グリエルと、5年4750万ドルの契約を交わした。

 サイン盗みがなければ――あるいはサイン盗みが発覚していなければ――ルーノーは、今もアストロズにいただろう。2018年6月に、アストロズはルーノーの契約を5年延長した。2019から2023年までだ。だが、2020年1月に、MLB機構がルーノーとA.J.ヒンチ監督を1シーズンの停職処分とした直後、アストロズは彼らを解雇した。

 昨シーズンから、ヒンチはデトロイト・タイガースで采配を振っている。ルーノーは、昨年7月にブルー・クロウ・グループを立ち上げ、今年6月にはスペインのサッカー・チーム、CDレガネスを買収した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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