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実現しなかった「夢のローテーション」の5人はどこへ。2人は今年のワールドシリーズで先発

宇根夏樹ベースボール・ライター
左から、ウィーラー、デグローム、シンダーガード、マッツ Aug 19, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ザック・ウィーラーは、フィラデルフィア・フィリーズの先発投手として、ワールドシリーズ第2戦のマウンドに上がった。ウィーラーに続き、第3戦はノア・シンダーガードが登板する。

 彼らは、別のチームでもチームメイトだった。ウィーラーは2019年まで、シンダーガードは2021年まで、ニューヨーク・メッツにいた。2015年には、マット・ハービージェイコブ・デグロームスティーブン・マッツの3人とともに、「ドリーム・ローテーション」を形成すると期待された。

 この年の5月と6月に、シンダーガードとマッツは、相次いでメジャーデビューした。メッツは、9年ぶりにポストシーズンへ進み、地区優勝にとどまらず、15年ぶりとなるリーグ優勝も飾った(ワールドシリーズは1勝4敗)。ちなみに、当時のメッツは、テリー・コリンズが指揮を執っていた。

 だが、「ドリーム・ローテーション」は実現しなかった。

 ウィーラーは、開幕直前にトミー・ジョン手術を受けた。マッツは、デビューから半月経たずに広背筋を痛め、2ヵ月離脱。メジャーリーグでは6登板しかできなかった。翌年もウィーラーは復帰できず、A+で1イニングを投げただけ。ハービーは、胸郭出口症候群の手術を受け、オールスター・ブレイク前にシーズンを終えた。

 2017年は、デグロームを除く4人が100イニングに届かなかった。2018年は、5人とも150イニングに達し、3人は防御率3.35未満を記録したものの、ハービーがメッツで投げたのは27.0イニングに過ぎない。4月下旬にローテーションからブルペンへ回され、5月上旬のトレードでシンシナティ・レッズへ移籍した。残る4人は、2019年も160イニング以上ながら、デグローム以外の3人は防御率4.00前後。人数だけでなく、成績も、ドリームとはいかなかった。

筆者作成
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 ウィーラーは、2019年のオフにFAとなり、5年1億1800万ドルの大型契約でフィリーズに迎えられた。マッツは、昨年1月のトレードでトロント・ブルージェイズへ移り、FA市場に出た昨オフ、セントルイス・カーディナルスと4年4400万ドルの契約を交わした。シンダーガードも、昨オフにFAとなり、1年2100万ドルの契約でロサンゼルス・エンジェルスに入団。夏のトレードにより、フィリーズへ移籍した。

 ハービーは、数球団を渡り歩いている。2019年の夏にエンジェルスから解雇されてからは、マイナーリーグ契約しか手にしていない。先月下旬にニューヨーク・ポストのジョエル・シャーマンが報じた記事によると、ハービーの代理人を務めるスコット・ボラスは、ハービーが9月に膝の手術を受け、来シーズンのメジャーリーグ復帰をめざしている、と語ったという。

 5人のなかで唯一人、今もメッツにいるデグロームは、来シーズンが5年1億3750万ドルの契約最終年だ。ただ、来シーズンの開幕をどのチームで迎えるのかは、まだわからない。今オフ、デグロームは、契約を打ち切ってFAになることができる。

【追記:11/1】ワールドシリーズ第3戦は、雨により、翌日に順延となった。これに伴い、シンダーガードに代わり、第3戦はレンジャー・スアレスが登板する。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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