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ジャッジが三冠王へわずかに前進。チームメイトの投手たちがライバルを封じる

宇根夏樹ベースボール・ライター
アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)Sep 22, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 9月20日以降、アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)は、本塁打と打点だけでなく、打率もリーグ・トップに位置している(各日終了時)。9月20日時点のスタッツと2位との差は、「60本塁打に達したジャッジが、同時に打率トップに立つ。三冠王を阻む選手はいる!?」で書いた。

 9月21日は、ホームランも打点もなかったものの、二塁打を2本打ち、4打数2安打。打率を.316から.317とした。2位のザンダー・ボガーツ(ボストン・レッドソックス)も、別の試合で4打数2安打を記録し、打率を.315から.317へ上げたものの、ジャッジを上回るには至らなかった。

 翌日、ジャッジとボガーツは、同じ試合に出場した。ここで、1位と2位が入れ替わってもおかしくなかった。レッドソックスの先発投手は、マイケル・ワカだ。これまで、ジャッジはワカに通算14打数0安打と封じられ、9三振を喫していた。一方、ヤンキースの先発投手は、ジェイムソン・タイオンだ。ボガーツも、タイオンを得意としているわけではないものの、苦手というほどでもない。対戦成績は、20打数5安打(打率.250)だ。

 この日、ジャッジは、5打席に立ち、2打数0安打に終わった。ワカとの対戦は、四球、四球、三振。あとの2打席は、四球とセンター・フライだ。最後の一打は、スタッツキャストによると、404フィート飛んだが、センターのフェンスは越えなかった。ジャッジの打率は.316に下がった。

 けれども、ジャッジとボガーツの打率の差は、2厘に広がった。ボガーツは5打数0安打。打率は.314となった。タイオンをはじめとするヤンキースの投手たちが、ライバルを封じ、三冠王に近づいているチームメイトを「アシスト」した格好だ。

 無安打のジャッジは、守備で投手をアシストした。ワンバウンドでライトのフェンスに当たって跳ね返った打球を捕ると、素早く正確に二塁へ投げ、打ったトミー・ファムをアウトにした。同点で迎えた9回表の先頭打者なので、この補殺は価値が高かった。試合は、10回裏にヤンキースがサヨナラ勝ちを収めた。

 現時点のア・リーグ打率トップ3、ジャッジ、ボガーツ、ルイス・アライズ(ミネソタ・ツインズ)の打率と順位は、9月に入ってから、以下のように推移している。現時点の4位は、打率.308のホゼ・アブレイユ(シカゴ・ホワイトソックス)だ。

筆者作成
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 ヤンキースとレッドソックスの対戦は、あと3試合残っている。先発マウンドに上がるのは、9月23日がゲリット・コールリッチ・ヒル、24日がドミンゴ・ハーマンニック・ピベッタ、25日はネスター・コーテズブライアン・ベイオの予定だ。ジャッジは、対ヒルが4打数2安打(打率.500)、対ピベッタが11打数5安打(打率.455)、対ベイオは2打数1安打(打率.500)。ピベッタからは、7月16日と9月13日にホームランを打っている。ボガーツは、対コールが34打数7安打(打率.206)、対ハーマンが20打数6安打(打率.300)、対コーテズは11打数1安打(打率.091)だ。対戦成績は、ジャッジがボガーツを凌いでいる。

 なお、本塁打2位のヨーダン・アルバレス(ヒューストン・アストロズ)も、9月22日はホームランがなく、その差は23本のまま、変わっていない。打点2位のホゼ・ラミレス(クリーブランド・カーディアンズ)は、犠牲フライを2本記録し、ジャッジとの差を13打点から11打点に縮めた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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