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両リーグ一番乗りで200イニングに達したこの投手は、サイ・ヤング賞を受賞するのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
サンディ・アルカンタラ(マイアミ・マーリンズ)Sep 13, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 9月13日、先発マウンドに上がったサンディ・アルカンタラ(マイアミ・マーリンズ)は、結果こそ黒星ながら、2点しか取られずに7イニングを投げた。

 これにより、シーズン全体のイニングは203.2となった。両リーグ一番乗りの200イニングだ。アルカンタラは、昨シーズンも、205.2イニングを投げている。昨シーズンの200イニング到達は32登板目、今シーズンは29登板目。30登板未満で200イニングに達した投手は、2017年のコリー・クルーバー(当時クリーブランド・インディアンズ/現タンパベイ・レイズ)を最後に途絶えていた。

 今シーズン、アルカンタラのイニングは、他の投手を引き離している。9月13日を終えた時点で2番目に多いのは、181.1イニングのマイルズ・マイコラス(セントルイス・カーディナルス)だ。ナ・リーグだけでなく、ア・リーグあるいは両リーグで投げている投手を含めても、2人の他に180イニング以上はいない。

 また、アルカンタラの防御率2.43は、ナ・リーグ2位。フリオ・ウリーアス(ロサンゼルス・ドジャース)の2.30に次ぐ。ナ・リーグで防御率2.60未満は、他に2人、ともに2.50――わずかに数値は異なる――のザック・ギャレン(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)とマックス・フリード(アトランタ・ブレーブス)だけ。この4人のうち、アルカンタラを除く3人は、170イニングに達していない。ウリーアスに至っては、アルカンタラより50イニング以上も少ない。

 ちなみに、アルカンタラとギャレンは、同じトレードで移籍している。2017年のオフに、マーセル・オズーナ(現アトランタ・ブレーブス)の交換要員として、他2人とともに、カーディナルスからマーリンズへ移った。

 アルカンタラは、防御率以外のスタッツも、軒並み、リーグ・トップ10にランクインしている。例えば、FIP3.11は5位、与四球率2.12は7位、K/BB3.77は10位だ。奪三振率8.00は14位だが、アルカンタラは多くのゴロを打たせている。ファングラフスのデータでは、ゴロ率53.7%。リーグで3番目に高い。

 ここから、防御率などが急激に悪化しない限り、アルカンタラはサイ・ヤング賞に選ばれるのではないだろうか。投球内容と結果がリーグで最も優れているとは言えないかもしれないが、トップ・クラスであることは間違いない。そこに、突出しているイニングを加味すれば、受賞にふさわしいと思う。

 逆のパターンながら、今シーズンのマイク・トラウト(ロサンゼルス・エンジェルス)がMVPの候補にふさわしくないのと、同じ理屈だ。35本塁打やOPS.994など、トラウトは、いつものトラウトらしい好成績を残している。ただ、規定打席に到達できるかどうかは、微妙なところだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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