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エンジェルスでは開花できなかった投手が、先発6登板で防御率0.64を記録する

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンドルー・ヒーニー(ロサンゼルス・ドジャース)Aug 6, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズン、アンドルー・ヒーニー(ロサンゼルス・ドジャース)は、先発投手として6試合に登板し、防御率0.64を記録している。

 スタッツ・バイ・スタッツによると、ヒーニーの防御率は、チームを問わず、そのチームにおける最初の6先発で計25イニング以上を投げた投手のなかでは、1981年のフェルナンド・バレンズエラ以来の低さだという。

 前年9月にメジャーデビューし、リリーフとして10試合に登板したバレンズエラは、1981年の開幕戦で先発マウンドに上がった。最初の6先発(6登板)を終えた時点の防御率は、0.33だった。ちなみに、当時のバレンズエラも、ドジャースで投げていた。

 もっとも、バレンズエラと違い、ヒーニーの登板には2度のブランクが挟まっている。4月中旬に2登板、6月中旬に1登板、7月下旬から3登板だ。また、バレンズエラが6登板とも9イニングずつを投げたのに対し、ヒーニーは最長でも6イニング。直近の8月6日を含め、4登板は5イニングに満たない。合計イニングは54.0と28.0。その差は倍近い。

 とはいえ、ヒーニーの防御率が低いことは事実だ。

 10年前のドラフトで、ヒーニーは、マイアミ・マーリンズから全体9位指名を受け、メジャーリーグ1年目を終えた2014年のオフに、マーリンズからドジャース、ドジャースからロサンゼルス・エンジェルスへ移籍した。同じ日に2度のトレードだ。エンジェルスでは、2015年に先発18登板で防御率3.49、2018年は先発30登板で防御率4.15を記録したが、故障の多さもあり、期待されていたような結果は残せなかった。

 昨年の夏、2投手と交換にニューヨーク・ヤンキースへ移ったヒーニーは、10月にDFAとされ――40人ロースターから外され――マイナーリーグ降格を拒否し、FAとなった。その1ヵ月後に、1年850万ドルの契約でドジャースに迎えられた。この契約については、「エンジェルスとヤンキースで6点近い防御率の左腕が、今年の年俸より高い1年850万ドルの契約を得る」で書いた。

 今シーズンも故障者リストに2度入っているものの、投球に関しては、ドジャースの期待以上だろう。どうやら、好投の要因は、球種にありそうだ。それまでは、速球にカーブとチェンジアップを交えていたが、今シーズンは、速球とスライダーのほぼ2球種としている。

 このままいっても、ヒーニーはポストシーズンのローテーションには入れないかもしれない。ドジャースでは、トニー・ゴンソリンフリオ・ウリーアスタイラー・アンダーソンの3人が、100イニング以上を投げて防御率2点台を記録している。離脱中の3人、ウォーカー・ビューラークレイトン・カーショウダスティン・メイも、シーズン終盤には戻ってくる予定だ。だが、ヒーニーも、ロースターには入るだろう。試合の中盤をつなぐリリーフ投手として、初めてのポストシーズンで貴重な働きをするかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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