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エンジェルスとヤンキースで6点近い防御率の左腕が、今年の年俸より高い1年850万ドルの契約を得る

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンドルー・ヒーニー Jul 22, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズン、アンドルー・ヒーニーは、ロサンゼルス・エンジェルスとニューヨーク・ヤンキースで投げ、計129.2イニングで防御率5.83を記録した。この防御率は、120イニング以上の96人中、ワースト3位に位置する。ボルティモア・オリオールズの2人、防御率6.27のマット・ハービーと防御率6.07のホルヘ・ロペスに次いで高かった。

 エンジェルスでは、18先発で防御率5.27。ヤンキースでは、5先発で防御率6.23を記録した後、ブルペンへ回されて7登板で防御率10.24。ポストシーズン(ワイルドカード・ゲーム)のロースターには入れなかった。

 だが、FAになったヒーニーは、早くも来シーズンの契約を手にした。それも、今シーズンの成績からすると、かなりいい契約だ。ジ・アスレティックのケン・ローゼンタールは、ヒーニーとロサンゼルス・ドジャースが800万ドル以上の契約で合意に達し、あとは身体検査のみ、とツイートした。それに続き、ESPNのジェフ・パッサンは、その契約について、1年850万ドルと報じた。ちなみに、今シーズンの年俸は675万ドルだった。

 昨シーズンまでの成績は素晴らしかった、というわけでもない。2018~20年の3シーズンは、2018年が180.0イニングで防御率4.15、2019年は95.1イニングで防御率4.91、短縮シーズンの2020年は66.2イニングで防御率4.46だった。また、2014年のデビュー以降、メジャーリーグで130イニング以上を投げたシーズンは、2018年しかない。

 ただ、ヒーニーは元トップ・プロスペクトだ。2012年のドラフトで、マイアミ・マーリンズから全体9位指名を受けた。現在の年齢は30歳。ここから開花する可能性もある。ここ4シーズンの奪三振率は、それぞれ、9.00、11.14、9.45、10.41と低くなく、与四球率は4年続けて2.85以下だ。K/BBは、4シーズンとも3.65を超えている。

 ドジャースがいち早く動いたのは、まずはローテーションの頭数を揃えるという意味合いもありそうだ。ドジャースからは2人の先発投手、クレイトン・カーショウマックス・シャーザーがFAになっている。彼ら(のどちらか)との再契約を含め、ここからさらに先発投手を手に入れてもおかしくない。

 現時点でローテーションの5人を挙げるなら、ウォーカー・ビューラーフリオ・ウリーアストニー・ゴンソリンデビッド・プライスに、ヒーニーだろう。ダスティン・メイは、5月にトミー・ジョン手術を受けた。トレバー・バウアーは、いつ復帰できるのか、復帰があるのかどうかも、まだわからない。ヒーニーとの契約は、潤沢な資金を持つドジャースならではの「保険」という見方もできる。

 なお、ヒーニーがドジャースのユニフォームを着て投げるのは、来シーズンが初めてだが、記録上、在籍は2度目だ。2014年12月11日に2度トレードされ、マーリンズからドジャース、ドジャースからエンジェルスへ移った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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