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記念すべき初本塁打のボールが、噴水に投げ込まれる

宇根夏樹ベースボール・ライター
ボビー・ウィットJr.(カンザスシティ・ロイヤルズ)May 3, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月3日、ボビー・ウィットJr.(カンザスシティ・ロイヤルズ)は、2回裏にホームランを打った。コーフマン・スタジアムの左中間スタンドに達した打球は、観客が捕り損ね、フィールドへ戻ってきた。

 センターを守っていたハリソン・ベイダー(セントルイス・カーディナルス)は、そのボールを拾い上げ、スタンドへ投げ込んだ。ロイヤルズのファンにあげようと思ったのだろう。

 だが、これは、ウィットJr.の初本塁打だ。開幕戦でデビューしたウィットJr.は、その試合の4打席目に初安打(二塁打)を記録し、4月21日から5月2日まで10試合続けてヒットを打っていたが、ホームランは出ていなかった。ベイダーは、そのことを知らなかったに違いない。

 ベイダーが投げ込んだボールは、観客のところにはいかず、スタンドの噴水――の下の滝のように水が流れ落ちているところ――へ消えていった。

 もっとも、それを追いかけ、噴水に入っていった観客はいなかった。その後、スタッフが回収したらしく、ボールはウィットJr.に届けられた。

 濡れてしまったとはいえ、汚れたわけではない。初本塁打ではないが、過去にはトイレに入ったホームランもあった(「ブライス・ハーパーの本塁打が飛び込んだ先は……水に関わりがあるとはいえ、海でも川でもプールでもなく」)。

 ウィットJr.は、トップ・プロスペクトだ。ドラフト順位は、2019年の全体2位。今シーズンの開幕前に各メディアが発表したプロスペクト・ランキングでは、ベースボール・アメリカの全体3位、ベースボール・プロスペクタスとMLB.comの全体1位に挙げられた。

 昨シーズンは、AAとAAAの計124試合で33本塁打(と29盗塁)を記録し、その直前のスプリング・トレーニングでは、484フィートのホームランを打っている。それについては、「大谷翔平を上回る特大ホームランを打ったのは、埼玉西武のニールの義弟」で書いた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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