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完全試合まであと2イニングの投手を降板させた理由は、どこにあるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)Apr 13, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)は、完全試合まであと2イニングに迫った。この時点の投球数は80だ。けれども、デーブ・ロバーツ監督は、カーショウを続投させなかった。代わって登板した投手がヒットを打たれ、完全試合は潰えた。それについては、「完全試合まであと6人で降板は、6年前のチームメイトと同じ。交代させた監督はどちらも…」で書いた。

 カーショウは、この日がシーズン初登板だった。その前の2登板は、4月2日のエキシビション・ゲームが53球、4月7日のシミュレーション・ゲームが75球だ。この点が、80球で降板させた最大の理由だろう。

 また、カーショウの前に投げたドジャースの先発投手は、4人とも80球未満でマウンドを降りている。彼らのうち、最も多く投げたのは、78球のウォーカー・ビューラーだ。あとの3人は、70球にも達していない。序盤に6失点(自責点3)のフリオ・ウリーアスはともかく、ビューラー、トニー・ゴンソリンアンドルー・ヒーニーの3人は、いずれも2失点以下だった。

 開幕早々というだけでなく、今年のスプリング・トレーニングは、ロックアウトにより、通常よりも短くなった。好投していても、先発投手を早めに交代させているのは、ロバーツ監督だけではない。「前日のダルビッシュに続き、マネイアも被安打ゼロで降板。どちらも同じ投手が打たれ、ノーヒッターは潰える」は、そのいい例だろう。ここまで、シーズン初登板で90球以上を投げたのは、96球のロビー・レイ(シアトル・マリナーズ)と92球のフランキー・モンタス(オークランド・アスレティックス)だけだ。

 スプリング・トレーニングの短縮に伴い、故障防止の観点から、5月1日までのアクティブ・ロースターは28人となっている。通常と比べて2人多く、投手は13人までという制約もない。各チームとも、いつもより多くのリリーフ投手を擁している。

 その上、カーショウが7イニングを投げ終えた時点のスコアは3対0だったが、ドジャースは、8回表に3点を追加した。リードが広がらなくても、ロバーツ監督はカーショウを降板させていただろうが、出てくるリリーフ投手が揃って打ち込まれない限り、逆転される可能性はほとんどなくなった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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