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秋山翔吾と契約を交わすメジャーリーグの球団はあるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
秋山翔吾 Apr 1, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 秋山翔吾が日本へ戻るつもりなら、2019年まで在籍した埼玉西武ライオンズをはじめ、契約を申し出る球団はあるだろう。けれども、メジャーリーグの球団となると、どうだろうか。

 2019年のオフに、秋山がFA市場に出た当時、興味を示したのは、シンシナティ・レッズだけではなかった。ただ、それから2年が経ち、31歳だった秋山は33歳になっている。4月半ばには、34歳の誕生日を迎える。

 しかも、メジャーリーグで結果を残したとは言い難い。2020年も2021年も183打席ずつに立ち、トータルの成績は、打率.224と出塁率.320、OPS.594だ。長打は、二塁打が14本と三塁打が1本で、ホームランはなし。盗塁は、成功9度に対し、失敗も6度を数えた。

 2020年の出塁率.357は、180打席以上の157人中47位に位置したが、2021年の出塁率.282は、383人中330位だ。サンプル数はそう多くないとはいえ、他のスタッツも、軒並み下降している。同じく2020年にメジャーデビューした筒香嘉智(現ピッツバーグ・パイレーツ)と違い、2年目にアジャストの兆しを見せることはできなかった。今春のエキシビション・ゲームでも、長打なしの22打数4安打(打率.182)だ。

 現時点でセールス・ポイントを挙げるなら、守備だろう。レフトとしての出場が多かった2020年は、ゴールドグラブの選考でナ・リーグのレフトのファイナリスト3人に入った。2020年は、レフトが246.1イニングとセンターが134.2イニング、2021年はセンターが295.0イニング、レフトが48.0イニング、ライトは7.0イニングだ。センターのポジションは、どの外野手も守れるわけではない。

 とはいえ、2020年(381.0イニング)と2021年(350.0イニング)の守備スタッツも、DRSが+6と-4、UZR150が+3.6と+1.5、OAAは+1と+1だ。両シーズンを比較すると、プラスあるいはそのままというよりは、ダウンしている。

 また、レッズの秋山に対する動きからわかるとおり、各球団とも、開幕ロースターのメンバーを固めつつある。例えば、テキサス・レンジャーズは、3月半ばにマイナーリーグ契約を交わしたジェイク・マリズニックを――球団がそうしたのか、マリズニックがそれを望んだのかは不明ながら――4月初旬に解雇した。マイアミ・マーリンズも、同様にデライノ・デシールズJr.を解雇。ロサンゼルス・ドジャースがマイナーリーグ降格とした数名のなかには、こちらもマイナーリーグ契約のケビン・ピラーがいる。ピラーが降格を受け入れるのか、退団するのかは、まだわかっていない。

 彼らは、3人ともセンターを守れる。それぞれの年齢は、31歳、29歳、33歳だ。いずれも出塁率は低いが、ピラーは2015~18年にトロント・ブルージェイズでセンターのレギュラーとしてプレーし、その守備から「スーパーマン」と称された。2019年には、サンフランシスコ・ジャイアンツで21本のホームランを打っている。

 ここから、秋山とメジャーリーグ契約を交わそうとする球団は、ないかもしれない。あるとしても、マイナーリーグ契約の可能性が高い。

 マイナーリーグ契約なら、レッズに残っていても同じだったと思うかもしれないが、先月下旬に「レフトとライトがいなくなったレッズで、秋山翔吾はレギュラーになれるのか」で書いたとおり、レッズは多くの外野手を擁している。その後、1年750万ドルの契約でトミー・ファムも加えている。マイナーリーグで結果を残しても、昇格できるチャンスは、球団によって異なる。秋山が日本へ戻らないのであれば、どの球団と契約を交わすのかの見極めは――その選択肢は多くないだろうが――重要になる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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