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鈴木誠也もそうなるのか。日本人野手のメジャーリーグ1年目は、ほとんどがパワーダウン。例外だったのは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
松井秀喜 JANUARY 14, 2003(写真:ロイター/アフロ)

 松井秀喜は、2002年に日本プロ野球で50本のホームランを打った。その翌年にメジャーリーグで記録したホームランは16本だ。本数からもわかるが、2002年の10.0打数に1本塁打に対し、2003年は38.9打数/本。ホームランを打つペースは、大きくダウンした。ISOも同様。2002年が.358、2003年は.148だ。ISOの計算式は「長打率-打率」。例えば、すべてシングル・ヒットで10打数10安打なら、「塁打÷打数」の長打率は1.000になる。一方、この場合のISOは.000だ。

 メジャーリーグ1年目に、その前年よりもパワーダウンした日本人野手は、松井秀喜だけではない。これまで、どちらのシーズンも200打席以上を記録したのは11人。そこに、メジャーリーグ1年目が短縮シーズンだった筒香嘉智(現ピッツバーグ・パイレーツ)と秋山翔吾(シンシナティ・レッズ)を加えた13人――この2人は2020~21年の合計をメジャーリーグ1年目の成績とした――のうち、パワーダウンしていないのは、青木宣親(現・東京ヤクルト・スワローズ)と大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)だけだ。

筆者作成
筆者作成

 ただ、青木は、2011年の数値が極めて低かった。その前の2シーズンは、2009年が33.2打数/本とISO.141、2010年は41.6打数/本とISO.151だ。これらと比べると、メジャーリーグ1年目のISOはその中間に位置するが、ホームラン1本当たりの打数はどちらよりも多い。

 大谷は、2017年が25.3打数/本とISO.208、2018年は14.8打数/本とISO.279。メジャーリーグ1年目の打数/本塁打は、日本プロ野球時代のシーズン・ベスト、2016年の14.7打数/本とほとんど変わらず、ISOは2016年の.266を上回る。

 サンプル数は多くない上、スパンも1シーズンずつと長くなく、打者としてのタイプもさまざまながら、ほとんどの選手がパワーダウンしていることからすると、鈴木もそうなってもおかしくない。鈴木と大谷はともに1994年生まれだが、それを鈴木がパワーダウンしない根拠とするのは、さすがに無理があるだろう。

 もっとも、ホームラン以外の長打を打つペースは、松井秀喜を含む6人がアップしている。一例を挙げると、新庄剛志のホームランではない長打は、2000年も2001年も、二塁打23本と三塁打1本。打数は511と400だ。100以上少ない打数で、同じ本数の二塁打と三塁打を打った。

 また、四球率は13人ともダウンしているものの、約半数の7人は前年比マイナス1%未満なので、ほぼ同水準だ。大谷は10.4%→10.1%。ちなみに、三振率も27.3%→27.8%とほとんど変わらなかった。

 鈴木は、四球率も高く、昨シーズンは16.3%を記録した。仮に、昨シーズンからホームランが半減し、20本前後にとどまったとしても、昨シーズンは26本だった二塁打(三塁打は0本)が増えれば、全体としては悪くない打撃成績になり得る。四球率は、前年比マイナス4%でも12%以上だ。昨シーズン、メジャーリーグで500打席以上の135人中、四球率12%以上は20人しかいなかった。

 鈴木の守備位置については、こちらで書いた。

「鈴木誠也はカブスでどこを守る!? ライトにはゴールドグラブ5度の名手がいるが…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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