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本塁打、安打、打点などの球団記録を持つ「ミスター・ナショナル」が引退。これらを塗り替えるのは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ライアン・ジマーマン(左)とホアン・ソト Apr 14, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ライアン・ジマーマンが、ユニフォームを脱ぐ。彼の代理人であるCAAベースボールが、ツイッターで発表し、そこに手記を掲載した。

 ジマーマンは、ワシントン・ナショナルズがドラフトで最初に指名した選手だ。2005年の全体4位。前年まで、この球団はモントリオール・エクスポズだった。

 指名から3ヵ月経たずにメジャーデビューし、ジマーマンは、ナショナルズ一筋にプレーしてきた(2020年は、新型コロナウイルス感染のリスクを考慮し、全休を選択)。16シーズンに記録した、出場1799試合、7402打席、6654打数、963得点、1846安打、284本塁打、417二塁打、723長打、3159塁打、1061打点は、いずれも、エクスポズ時代を含めた球団記録だ。1384三振と212併殺打も、最も多い。球団2位の646四球と69犠飛――それぞれの1位は、ティム・レインズの793四球とアンドレ・ドーソンの71犠飛――も、球団がナショナルズになった2005年以降に限ると、最多となる。

 近い将来、これらの記録が塗り替えられることはない。例えば、ホームランの6位に位置し、ジマーマンと100本差のブライス・ハーパーは、現役選手ながら、すでにナショナルズを去っている。2018年のシーズン終了後にFAとなり、フィラデルフィア・フィリーズから13年3億3000万ドル(2019~31年)の契約を得た。ハーパーに次ぐ7位、136本塁打のアンソニー・レンドーンも同様だ。こちらは、ロサンゼルス・エンジェルスと7年2億4500万ドル(2020~26年)の契約を交わしている。

 ジマーマンの記録を更新する選手が現れるとすれば、現時点の筆頭候補は、ホアン・ソトだろう(「トラウトに続いて「4億ドル以上」の大型契約を得るのは、大谷ではなくこの選手!?」)。2018年5月にメジャーデビューしたソトは、これまでに98本のホームランを打っている。最初の4シーズンの本塁打は、ジマーマンより40本多く、4シーズン目の年齢(6月30日時点)も1歳若い。エクスポズあるいはナショナルズで最初の4シーズンに90本以上のホームランを打った、ソト以外の選手は、1996~99年に92本のブラディミール・ゲレーロと2012~15年に97本のハーパーだけだ。

 なお、ジマーマンが「ミスター・ナショナル」と呼ばれるのは、ナショナルズ一筋に長くプレーし、スタッツを積み上げたことだけが理由ではない。その証の一つが、11本のサヨナラ本塁打だ。この本数は、メジャーリーグ全体――ナ・リーグとア・リーグ――の8位タイに位置する。ちなみに、ハーパーのサヨナラ本塁打は6本(ナショナルズで5本)、レンドーンとソトはまだ0本だ。

筆者作成
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ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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