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昨年の日本シリーズに続き、ノーヒッターを継続したまま降板する。前回は7イニング、今回は6イニング

宇根夏樹ベースボール・ライター
マット・ムーア(フィラデルフィア・フィリーズ)Aug 14, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月14日、マット・ムーア(フィラデルフィア・フィリーズ)は、1回表から6回表まで、どのイニングもヒットを打たれることなく終わらせた。そして、6回裏には送りバントを成功させた。けれども、7回表のマウンドには上がらなかった。

 昨年の日本シリーズ第3戦でも、ムーアはノーヒッターを継続したまま、降板している。この時は福岡ソフトバンク・ホークスの投手として、7イニングで93球を投げた。それに対し、今回は6イニングで76球。この点からすると、少なくともあと1~2イニングはいけたようにも思える。

 ただ、それまでのムーアは、不本意なシーズンを過ごしてきた。開幕ローテーションに入ったものの、最初の3先発で防御率9.82を記録した後、新型コロナウイルスに感染。5月はブルペンから、主にモップ・アップ(敗戦処理)として登板した。5月下旬に腰を痛め、故障者リストに入って1ヵ月を過ごした後も、6先発で防御率5.86。8月に入り、再びブルペンに回された。6イニングで96球を投げて6失点の7月22日以外は、どの登板も6イニング未満&80球以下だった。6月下旬から7月下旬の6先発と同じく、今回の先発登板も故障者の発生によるものだ。

 ノーヒッターを継続していたとはいえ、フィリーズのリードは2点しかなく、ジョー・ジラルディ監督がムーアを交代させたことは、それほど驚きではなかった。試合は、フィリーズが6対1で勝利を収めた。

 今後の投球内容と他の投手次第では、ムーアはポストシーズンのロースターに入れない可能性もある。ちなみに、現時点のフィリーズは、アトランタ・ブレーブスと並ぶ地区首位にいる。ただし、ワイルドカード・レースでは2位のサンディエゴ・パドレスに4ゲーム差をつけられていて、地区優勝を逃すとポストシーズンにはたどり着けないかもしれない。負けるわけにはいかないというチーム状況も、ムーアの降板につながったのだろう。

 なお、ムーアがノーヒッターに最も近づいたのは、昨年の日本シリーズではない。サンフランシスコ・ジャイアンツ時代の2016年8月25日に、ノーヒッター達成まであと1アウトに迫りながら、コリー・シーガー(ロサンゼルス・ドジャース)にヒットを打たれている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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