Yahoo!ニュース

借金1のチームがスラッガーの外野手を獲得。ただし、今後「買い手」から「売り手」に転じる可能性も…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョク・ピーダーソン May 25, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 後半戦を前に、アトランタ・ブレーブスは、トレード市場で「買い手」として動いた。7月15日、マイナーリーガーの一塁手、ブライス・ボールと交換に、シカゴ・カブスから外野手のジョク・ピーダーソンを獲得した。

 ブレーブスでは、5日前に外野手のロナルド・アクーニャJr.が負傷し、シーズンを終えた。診断の結果、右膝の前十字靱帯の断裂が判明した。前半戦を終え、ブレーブスは44勝45敗のナ・リーグ東地区3位ながら、地区首位のニューヨーク・メッツまでは4ゲーム差の位置にいる(ワイルドカード・レースでは5番手にいて、2番手のサンディエゴ・パドレスとは7ゲーム差)。ポストシーズン進出をあきらめるのは、まだ早い。

 ピーダーソンは、アクーニャJr.のようなパワーとスピードを兼ね備えた選手ではない。盗塁は8シーズンで通算19に過ぎず、失敗は21と多い。けれども、25本塁打以上のシーズンは4度を数え、その4度目となる2019年は36本のホームランを打った。

 ただ、ここからトレード・デッドラインの前日までに、ブレーブスが行う15試合の相手は、4チームとも、ブレーブスのシーズン勝率を上回る。7月16日~18日にア・リーグ東地区2位のタンパベイ・レイズ(勝率.589)と3試合、19日~21日にナ・リーグ西地区3位のパドレス(勝率.570)と3試合、22日~25日にナ・リーグ東地区2位のフィラデルフィア・フィリーズ(勝率.500)と4試合、26日~29日にメッツ(勝率.540)と5試合。26日はダブルヘッダーだ。

 そこで黒星を重ね、同地区のメッツあるいはフィリーズに引き離され、現時点でも薄いワイルドカードの目も消滅するようなら、7月30日のデッドラインを前に、ブレーブスは「売り手」に転じる可能性が高い。そうなれば、ブレーブスはピーダーソンを手放そうとするだろう。1月にカブスがピーダーソンと交わした契約は1年700万ドル。今シーズンは年俸450万ドル、来シーズンは年俸1000万ドルの相互オプションだ。オプションの解約金は250万ドルなので、450万ドル+250万ドル=700万ドルとなる。

 ブレーブスに、1000万ドルのオプションを行使するつもりはないはずだ。シーズン終了までピーダーソンを保有した場合、ブレーブスは、今シーズンの年俸の残り分である200万ドル弱に加え、解約金の250万ドルも支払う必要がある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事