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どちらも2010年代に本塁打王を獲得した2人の「クリス・デービス」は、どこへいった!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
アダム・ジョーンズ(左)とクリス・デービス(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2010年代のア・リーグ本塁打王には、クリス・デービスの名前が3つ並ぶ。2013年は53本塁打、2015年は47本塁打、2018年は48本塁打だ。もっとも、同一人物がタイトルを3度獲得したのではない。2013年と2015年の本塁打王は同じクリス・デービスだが、2018年は別人のクリス・デービスだ。「Chris」と「Khris」。ファーストネームのイニシャルが違う。

 ここからは、混乱を避けるため、前者をC.デービス、後者をK.デービスと表記する。

 今シーズンも、C.デービスは、当時と同じボルティモア・オリオールズに在籍している。ただ、試合には出場していない。スプリング・トレーニングが始まった直後に腰を痛め、5月半ばに手術を受けてシーズン全休となった。

 一方、オークランド・アスレティックスで本塁打王を獲得したK.デービスは、今年2月にテキサス・レンジャーズへ移籍した。3月下旬に左の太腿を痛めたものの、1ヵ月遅れで開幕を迎え、6月に入ると2試合続けてホームランを打った。だが、ホームランはこの2本しかなく、打率は.157(51打数8安打)。6月8日に40人ロースターから外された。獲得を申し出る球団は現れず、1週間後に解雇。その後も、動きはないようだ。

 2人はともに、「クラッシュ」のニックネームを持つ。これは、ケビン・コスナーが映画「さよならゲーム」で演じた、クラッシュ・デービスにちなむ。K.デービスも2018年だけの「一発屋」ではなく、2016年から3シーズン続けて40本以上のホームランを打った。5シーズンごとに区切ると、C.デービスが2012~16年に記録した197本のホームランは、このスパンの誰よりも多い。後ろに1シーズンずらした、2013~17年の190本も2位だ。K.デービスは2014~18年の182本が4位、2015~19年の183本は6位に位置する。

 近年の相次ぐ故障と打撃不振も、彼らは共通する。特に、C.デービスの凋落は目を覆うばかり。2018年から2019年にかけて、野手では史上最長となる54打数連続ノーヒットを記録した。通算300本塁打まではあと5本ながら、ここ2シーズンはそこから一歩も近づいていない。

筆者作成
筆者作成

 現在、C.デービスは35歳、K.デービスは33歳だ。C.デービスが解雇されていないのは、7年1億6100万ドルの契約が来シーズンまで残っているからに過ぎない。K.デービスは、今シーズンが2年3350万ドルの契約最終年だった。そもそも、レンジャーズがK.デービスを欲していたのかどうかも、定かではない。K.デービスとエルビス・アンドゥルース(レンジャーズ→アスレティックス)らが動いたトレードにより、レンジャーズは2022年に支払う金額の一部を2021年にシフトさせ、2022年の予算に余裕を持たせた。

 なお、K.デービスは、2015~18年に4シーズン続けて打率.247という珍記録を作っている(前後のシーズンはそれよりも低く、2014年は打率.244、2019年は打率.220)。これについては、当時、こちらで書いた。

本塁打王に加え、奇跡のストリークも継続。4年続けて打率はぴったり同じ

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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