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過去5年はメジャーリーグ登板なしの34歳左腕が、ヤンキースのブルペンを救う!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ルーカス・リットキー(ニューヨーク・ヤンキース)Feb 25, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年12月、ルーカス・リットキーは、ニューヨーク・ヤンキースとマイナーリーグを交わした。そして、ツイッターにマグカップの写真をアップし、こう綴った。「現在の妻と2007年にデートした時に、このコーヒー・マグを作った。当時の好きなチームは、カウボーイズとヤンキースだったんだ(そう、多くの人と同じように)。13年後の今、こう言えて、とてもうれしい。2021年にヤンキースでプレーするために契約したって!!!」

 とはいえ、この時点で、リットキーが開幕ロースターに入ると予想した人は、ほとんどいなかったはずだ。

 2015年を最後に、リットキーはメジャーリーグで投げていない。

 2011年のオフにルール5ドラフトでミルウォーキー・ブルワーズからシアトル・マリナーズへ移り、2012年は63登板の計40.2イニングで防御率3.98を記録したが、そこから2年続けて、登板とイニングは減少し、防御率は上がった。2015年の防御率は0.00ながら、これは、敗戦処理に近い1登板の2.1イニングに過ぎない。

 その後、リットキーは5球団とマイナーリーグ契約を交わしたが、メジャーリーグには一度も昇格できなかった。年齢も、すでに若くはない。3月24日に、34歳の誕生日を迎えた。

 ハイライトとしては、2012年6月8日の継投ノーヒッターがあるものの、これも、6投手の4人目として、3球を投げただけ。1対0とリードした8回表、無死一、二塁の場面で登場し、送りバントを決められてマウンドを降りた。

 また、ヤンキースは2月下旬に、リットキーと同じ左のリリーバーであるジャスティン・ウィルソンを、1年515万ドルで迎え入れた。クローザーのアロルディス・チャップマンは別にしても、ブルペンにザック・ブリットンとウィルソンがいれば、他の左投手は必要ない。リットキーがロースターに入るチャンスは、さらに少なくなった。

 ところが、ブリットンは左肘に痛みを訴え、3月上旬に骨棘を取り除く手術を受けた。少なくとも、開幕から3ヵ月は欠場する見込みだ。ウィルソンも、3月下旬の登板中、左肩に違和感を覚えて降板した。こちらの状況は、まだはっきりしない。

 チャップマンにつなぐセットアッパーの役割は、チャド・グリーンダレン・オデイが務めるにしても、ブリットンだけでなくウィルソンも故障者リストに入れば、チャップマン以外に左投手が不在のブルペンとなる。そうならないようにするため、ヤンキースはマイナーリーグ契約の左投手2人、リットキーとタイラー・ライオンズを開幕ロースターに入れそうだ。

 単なる、棚から牡丹餅、ではない。ここまでは、2人とも好成績を残している。リットキーは7登板の計7.2イニングで2失点(自責点2)。15三振を奪い、1人しか歩かせていない。ライオンズは6登板の計5.1イニングで1失点(自責点1)。奪三振は10、与四球は1だ。

 今春のリットキーの映像をいくつかチェックした限りでは、大きな弧を描くように落ちるカーブがよく決まっている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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