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投手三冠の翌年に「開幕投手でない」のは、千賀滉大が何人目!? 福岡ソフトバンクの開幕投手は石川柊太

宇根夏樹ベースボール・ライター
松田宣浩(左)と千賀滉大 MARCH 15, 2017(写真:アフロスポーツ)

 昨シーズン、千賀滉大(福岡ソフトバンクホークス)は、防御率2.16、11勝6敗、奪三振149を記録し、最優秀防御率、最多勝、最多奪三振のタイトルを手にした(勝利はチームメイトの石川柊太と東北楽天ゴールデンイーグルスの涌井秀章と並び、奪三振はオリックス・バファローズの山本由伸とタイ)。同じシーズンに、この3部門ともリーグ・トップの「投手三冠」は、千賀が延べ21人目だ。稲尾和久が、1958年と1961年に記録している。

 だが、今シーズン、福岡ソフトバンクで開幕投手を務めるのは、千賀ではない。千賀は調整が遅れていて、開幕に間に合わない可能性が高い。すでに、工藤公康監督は石川を開幕投手に指名している。ちなみに、千賀の開幕投手は、2018~19年の2度。千賀は昨シーズンも調整が遅れ、工藤監督は3月に東浜巨を指名。開幕が延期された後も、人選は変わらなかった。千賀は、福岡ソフトバンクの開幕16試合目に初めて登板した。

 千賀の前の「投手三冠」4人、1999年の上原浩治、2006年の斉藤和巳、2010年の前田健太(現ミネソタ・ツインズ)、2018年の菅野智之(読売ジャイアンツ)は、いずれもその翌年の開幕戦で先発マウンドに上がった。もっとも、さらに遡ると、「投手三冠」の翌年に開幕投手でなかった例は少なくない。延べ21人中、約半数の10人が、翌年の初登板は、在籍球団の開幕2試合以降だった(千賀が10人目)。なかには、翌年の初登板が先発ではなく、リリーフという投手もいた。

筆者作成
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 それぞれ、投手陣の事情は異なる。例えば、1990年代の「投手三冠」2人、1990年の野茂英雄と1999年の上原は、どちらも前年のドラフトで入団し、プロ1年目だった。その翌年(1991年)の野茂は、開幕投手の阿波野秀幸に続き、近鉄バファローズの2試合目に投げた。2000年の上原は、2年目にして読売の開幕投手を任された。阿波野は、その前の3年も開幕戦に登板。一方、読売の開幕投手は、1993年から1997年まで斎藤雅樹が務めた後、1998年は桑田真澄、1999年はバルビーノ・ガルベスと入れ替わっていた。

 野茂は、1993~94年に近鉄で開幕投手を務めた他(1992年は小野和義)、メジャーリーグでも3度、2000年のデトロイト・タイガースと2003~04年のロサンゼルス・ドジャースで、開幕戦に先発投手として登板した。上原は、2000年から7年続けて開幕投手。メジャーリーグ時代の開幕投手はないが――先発登板はルーキーだった2009年の12試合だけ――2013年と2016年のボストン・レッドソックスと2017年のシカゴ・カブスで、開幕戦にリリーフとして投げ、3登板とも1イニングを無失点に抑えた。

 なお、千賀は「投手三冠」ながら、沢村栄治賞には選ばれていない。それについては、受賞者の発表前にこちらで書いた。

投手三冠で沢村賞を逃したのは1人だけ。千賀滉大は2人目になる!?

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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