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一桁勝利の最優秀防御率。「23先発で4勝」や「16完投で7勝」の防御率リーグ1位も

宇根夏樹ベースボール・ライター
チェン・ウェイン Jul 30, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 大野雄大(中日ドラゴンズ)は、過去2年ともセ・リーグ・ベストの防御率を記録している。そのうち、2020年は11勝を挙げたが、2019年の白星は二桁に届かなかった。大野が9勝にとどまった2019年は、パ・リーグの防御率1位も一桁勝利。山本由伸(オリックス・バファローズ)の白星は、大野より1つ少なかった。山本は2020年の防御率も、1位と僅差の2位。こちらも前年と同じく、8勝しかできなかった。

 2019年の大野と山本を含め、一桁勝利の最優秀防御率は、延べ23人を数える。このタイトルを3度獲得した村田兆治は、1975年と1989年が10勝未満だ(1976年は21勝)。デビューから2年続けて最優秀防御率の安田猛は、1年目の7勝に続き、2年目の1973年も、辛うじて二桁の10勝だった。

筆者作成
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 最初の1人、1936年秋の景浦将は、8登板なので二桁勝利を挙げようがない。また、2人目から13人目までと17人目――1964年の妻島芳郎から1988年の河野博文までと1998年の金村暁は、登板の半数以上がリリーフだ。一方、残る9人は、そのなかで登板に占める先発の割合が最も低い、2000年の戎信行でも81.0%。にもかかわらず、いずれも二桁の白星を手にすることはできなかった。

 2002年にオリックス・ブルーウェーブで金田政彦が記録した4勝は、最優秀防御率の投手がその年に挙げた最も少ない白星だ。この年のオリックスは、リーグ・ワーストの438得点。他の5球団とはかなりの差があり、ワースト2位の千葉ロッテマリーンズでさえ、500得点を挙げた。金田とチームメイトのク・デソン(具臺晟)も、金田に次ぐリーグ2位の防御率2.52ながら、22登板(22先発)で5勝に終わった。

 1989年にロッテ・オリオンズで7勝の村田は、完投した16登板が7勝(6敗)、それ以外の6登板は白星なし(3敗)。勝敗がつかなかった3完投は、引き分けだ。そのうちの2試合は12イニングを投げ、あと1試合は6回2死に雨天コールドとなった。この年のロッテは、ワースト2位の558得点だった。

 一方、一桁勝利の最優秀防御率には、在籍する球団の得点が少なくなかった例も、いくつかある。直近では、2009年に中日ドラゴンズで8勝のチェン・ウェイン(陳偉殷/現・阪神タイガース)がそう。この年の中日は、リーグ2位の605得点を挙げた。チェンのチームメイトで、リーグ2位の防御率2.00を記録した吉見一起は、チェンの倍に当たる16勝を挙げ、最多勝のタイトルを獲得した。

 なお、二桁勝利ではあるものの、10勝ちょうどの最優秀防御率は、1973年の安田を含めて6人いる。1971年の藤本和宏と1974年の関本四十四は、シーズン最後の登板で10勝目を挙げた。藤本の場合は、在籍する広島東洋カープのシーズン最終戦でもあった。2000年の石井一久と2004年の松坂大輔も、先発としてはシーズン最後の登板で、白星を二桁に乗せた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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