Yahoo!ニュース

今夏のトレード市場で一番人気はこの選手。獲得に動く球団は二桁に上る!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
マーカス・ストローマン(トロント・ブルージェイズ) Jul 19, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 この夏、最も多くの球団が欲しがっている選手は、トロント・ブルージェイズのエース、28歳のマーカス・ストローマンだろう。ポジションを問わず、だ。MLB.comのジョン・モロシによると、7月19日のコメリカ・パークには、8球団のスカウトあるいは関係者がいたという。

 彼らが球場を訪れたのは、他の選手の視察が目的だった可能性もある。ブルージェイズだけでなく、デトロイト・タイガースも、今夏の立ち位置は「売り手」だ。とはいえ、ストローマンの登板日でなければ、これほどは集まらなかったに違いない。モロシの記事に出ている8球団以外にも、ストローマンの獲得に動くのでは、と噂されている球団は存在する。

 昨シーズン、ストローマンは故障もあり、19先発で防御率5.54に終わった。だが、今シーズンは20先発で防御率3.06を記録している。これは、2年前の防御率3.09とほぼ変わらない。完全に復調したと見ていいだろう。

 ストローマンは、シンカーとスライダーを軸とするグラウンド・ボーラーだ。ファングラフスのデータによれば、今シーズンのゴロ率は57.1%。自身の例年と比べると少し低いものの、80イニング以上の104投手中、2番目に高い。ホームランが出やすい球場をホームとする球団にも、ストローマンはフィットする。

 人気を高めている理由は、他にもある。ストローマンがFAになるのは、来シーズンのオフだ。今夏に獲得した球団は、数ヵ月の「レンタル」にとどまらず、来シーズンも保有できる。今秋のポストシーズン進出をめざす球団はもちろんのこと、今秋をあきらめているわけではないが、むしろ、来秋のポストシーズンをゴールとする球団にとっても、手に入れる価値のある投手ということだ。

 また、ストローマンとともにトレードの候補となっている先発投手のうち、ザック・ウィーラー(ニューヨーク・メッツ)は、7月半ばに肩を痛め、故障者リストに入った。月末のトレード・デッドラインまでには復帰できる見込みだが、健康状態が100%に戻るかどうかには不安を残す。マディソン・バムガーナー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)は、チームが6月末から急浮上しており、放出されない可能性も、わずかながら出てきた。ウィーラーのトレード・バリューが下がり、バムガーナーがトレード市場から姿を消せば――あるいはどちらか一方でも、相対的にストローマンの需要は高まる。ちなみに、ウィーラーとバムガーナーは、今シーズンが終わるとFAになる。

 ストローマンのポストシーズンにおける成績は、バムガーナーのそれと比べると見劣りするが、これはストローマンに限らず、ほとんどの投手について言えることだ(ウィーラーはポストシーズンの経験なし)。ストローマンは、2015年と翌年のポストシーズンで計5試合に先発して防御率4.40ながら、そのうちの3試合はクオリティ・スタートを記録している。さらに、2017年のWBCは3先発して防御率2.35。決勝戦では、7回表の先頭打者に二塁打を打たれるまで、プエルトリコを無安打(与四球1)に封じ、勝利投手になるとともに、MVPも受賞した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事