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10先発続けて黒星でも、ローテーションから外されない理由。その間の防御率は9点台

宇根夏樹ベースボール・ライター
アーロン・サンチェス(トロント・ブルージェイズ) Jul 17, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月17日、アーロン・サンチェス(トロント・ブルージェイズ)が、またしても黒星を喫した。最後に白星を挙げたのは4月27日。その後の15登板は0勝13敗だ。直近の10登板は、いずれも黒星がついている。

 10登板続けて先発し、そのいずれも黒星というのは、2011~13年のケビン・スローイー以来だ。スローイーは、メジャーリーグで登板しなかった2012年を挟み、2011年に閉幕までの8登板で8敗、2013年に開幕からの2登板で2敗を喫した。

 ここまで、サンチェスはローテーションの一角を担い、21試合に先発して、3勝14敗、防御率6.26を記録している。黒星はどの投手よりも多く、防御率は80イニング以上のワーストだ。ここ10登板に限ると、クオリティ・スタートは一度もなく(シーズン全体では3度)、防御率は9.40まで跳ね上がる。シンカーでゴロを打たせる投球を持ち味とし、奪三振はもともと多くなかったが、制球が定まらない。10試合で45.0イニングを投げ、奪三振と与四球はどちらも28だ。

 にもかかわらず、サンチェスはローテーションにとどまる。次は、中5日で7月23日に投げる予定だ。

 現在、ブルージェイズは借金26を抱え、地区首位からもワイルドカードの2番手からも19ゲーム以上離されている。それでも、先発投手あるいはオープナーの次に投げる投手が必要であることに、変わりはない。7月末までに、エースのマーカス・ストローマンが移籍すれば(その可能性はかなり高い)、頭数はさらに少なくなる。

 また、ブルージェイズがポストシーズン進出を狙えるようになるのは、2021年以降だろう。それに対し、サンチェスは2020年のオフにFAとなる。ここで若手を起用し、例えば、AAにいるネイト・ピアソンをメジャーデビューさせ、FAまでの期間を縮めるよりは、サンチェスをそのまま投げさせた方が理に適う。サンチェスの投球がさらに悪化すれば別だが、少なくとも現時点ではそうだ。

 年齢からすると、サンチェスは復調してもおかしくない。7月1日に27歳の誕生日を迎えたばかりだ。3年前には、リーグ・ベストの防御率3.00を記録している。かつての投球を取り戻せば、来夏にトレードで放出され、ストローマンと同じように、ブルージェイズにプロスペクトをもたらすはずだ。

 なお、ベースボール・リファレンスによると、1908年以降、すべて先発登板で、勝敗がつかなかった試合を挟むことなく、最も長く負け続けたのは、1956~57年にチャック・ストッブスが記録した14連敗だ。ただ、この14登板の防御率は6.45ながら、クオリティ・スタート――当時、こういう考え方は存在しなかった――は4度あった。しかも、味方が3得点以上は1試合しかなく、5試合は完封され、1得点も5試合を数えた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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