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イチローに刺された走者たち。最も多くレーザービームの餌食になったのはTロングではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ネルソン・クルーズ(左)とマイケル・ヤング OCT 1, 2011(写真:ロイター/アフロ)

 イチローは、メジャーリーグで123補殺を記録した。ベースボール・リファレンスのデータによると、これは外野手の歴代211位タイだ。デューク・スナイダーロッキー・コラビトマーク・コッツェイの3人と並ぶ。2001年以降に限ると、ジェフ・フランコーアの135補殺とカルロス・ベルトランの122補殺(2000年までに21補殺)に次ぎ、3番目に多い。

筆者作成
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 イチローの補殺のなかで最も有名なのは、メジャーリーグで最初に記録したものだ。2001年4月11日、8回裏1死一塁の場面。ライトを守っていたイチローは、ラモン・ヘルナンデスのヒットを捕るや三塁へ送球し、一塁から三塁へ向かっていたテレンス・ロングをアウトにした。この試合を実況中継していたリック・リズは「レーザービーム」と形容。ちなみに、イチローの送球を受けてロングにタッチしたデビッド・ベルは、今シーズンからシンシナティ・レッズの監督を務めている。

 ただ、ロングがイチローに刺されたのは、このプレーだけだ。イチローに2度以上刺された選手は4人いる。なかでも、マイケル・ヤングは他の3人と違い、3度アウトになった。2003年7月28日、2007年7月25日、2008年9月2日の試合だ。いずれの場面でも、ヤングは一塁にいた。最初はライトのイチローから一塁手のジョン・オルルード、捕手のダン・ウィルソンと転送され、本塁でアウトに。2度目の送球は、センターのイチローから遊撃手のユニエスキー・ベタンコートを経て、城島健司のミットに収まった。そして、3度目はライトのイチローから三塁手のエイドリアン・ベルトレーへ。イチローは二塁走者のホアキン・アリアスの生還を阻むのは無理だと判断し、三塁へ投げた。

 イチローにそれぞれ2度刺された3人は、ブラディミール・ゲレーロネルソン・クルーズ(現ミネソタ・ツインズ)、ジェームズ・ローニーだ。ゲレーロは5ツールを備え、送球の正確さはともかく、肩の強さはイチロー以上だった。2002年には、40-40(40本塁打&40盗塁)まで、あと1本塁打に迫った。また、日本人メジャーリーガーでは、松井秀喜福留孝介(現・阪神タイガース)が、イチローに刺されている。松井は2011年4月3日に、二塁から三塁へタッチアップを試みてアウトに。福留はその翌年の4月22日に、二塁からホームインを狙ったが、イチローがライトから投げた球に阻まれた。とはいえ、松井も福留もこの試合で打点を挙げ、チームの勝利に貢献した。

 なお、イチローの123補殺中、アウトにならなかった走者もいる。2005年6月24日のゼイビア・ネイディと、2013年4月27日のエドウィン・エンカーナシオン(現シアトル・マリナーズ)がそうだ。2人とも三塁からタッチアップ。タイミングはアウトだったが、捕手のエラーによってホームインした。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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