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不動の正捕手ではなく、ナショナルズは今オフ、2人の捕手を手に入れた。これは良策!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
カート・スズキ(左)とアーメッド・ロザリオ Aug 5, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、ワシントン・ナショナルズは2人の捕手を手に入れた。2年1000万ドルでカート・スズキを迎え入れたのに続き、トレードにより、クリーブランド・インディアンズからヤン・ゴームスを獲得した。

 ナショナルズは、捕手を手に入れる必要があった。今シーズン、チーム最多の64試合でスタメンマスクをかぶったマット・ウィータースは、FAになっている。ペドロ・セベリーノ(56試合)とスペンサー・キーブーム(39試合)、ロウディー・リード(AAとAAAで計45試合)はいるものの、レギュラーではなく併用にしても、3人とも――少なくとも現時点ではまだ――心許ない。

 新たに手に入れた2人のスタメンマスクは、スズキがアトランタ・ブレーブスで83試合、ゴームスはインディアンズで105試合だ。彼らを併用すれば、レギュラーシーズンの162試合をまかなえる。オフェンスも問題はなく、ともに今シーズンはOPS.760以上を記録した。来シーズンは出場機会を分け合うので、今シーズンの合計28本塁打とはいかないだろうが、20本程度は期待できそうだ。今シーズンのナショナルズは、捕手の本塁打が計12本、OPSは.624だった(捕手出場時のみ)。

 また、スズキの契約内容は、来シーズンが400万ドル、2020年は600万ドルだ。ゴームスは来シーズンが700万ドルで、そこに2年分の球団オプション(2020年=900万ドル、2021年=1100万ドル)がついている。ナショナルズが2人に払う金額の合計は、来シーズンが1100万ドル、2020年は1500万ドル(オプション行使の場合)となる。なお、オプションを破棄するには100万ドルが必要だ。

 FA市場にはヤズマニ・グランダルが出ていて、J.T.リアルミュート(マイアミ・マーリンズ)にはトレードの噂が浮上している。どちらも、今シーズンは20本塁打&OPS.815以上。オフェンスだけを見ても、ナショナルズが手に入れた2人を上回る。だが、スズキとゴームスの契約を合計した金額では、グランダルを入団させることはできそうにない。リアルミュートを獲得するには、交換にかなりのプロスペクトを求められる。

 スズキとゴームスの捕手2人を擁するメリットは、他にもある。一方が長期離脱しても、もう一方によってその穴を埋められるので、大きなダメージにはならない。正捕手と控え捕手の力量に開きがあると、そうはいかない。

 なお、スズキは2012年の夏から翌年の夏まで、ナショナルズでプレーした。現在のナショナルズにいる先発投手のうち、スティーブン・ストラスバーグとは13試合でバッテリーを組み、リリーフ登板時ながら、タナー・ロアークの球を受けたこともある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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