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防御率1点台の負け越し投手が、108年ぶりに誕生か。サイ・ヤング賞の行方は?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ) Aug 8, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月8日、ジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ)は6イニングを無失点に抑え、白星を手にした。シーズン防御率は1.77。5月2日の登板後は、ずっと1点台をキープしている。にもかかわらず、6勝7敗と黒星が先行する。

 防御率1点台で負け越した投手は、1910年の3人、エド・ウォルシュ(18勝20敗、防御率1.27)、スモーキー・ジョー・ウッド(12勝13敗、防御率1.68)、フレッド・オルムステッド(10勝12敗、防御率1.95)を最後に途絶えている。デグロームがそうなれば、108年ぶりのことだ。白星と黒星が同数も、今からちょうど100年前、1918年のアラン・ソソロン(12勝12敗、防御率1.94)まで遡る。

 もう一つ、気になるのはサイ・ヤング賞の行方だ。現在、ナ・リーグには防御率2.50未満の投手が3人いる。

筆者作成
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 このままいけば、受賞するのは、デグロームかマックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)だろう。アーロン・ノラ(フィラデルフィア・フィリーズ)は、ほとんどのスタッツにおいて、少なくとも2人のどちらかに劣る。リリーフ投手のジョシュ・ヘイダー(ミルウォーキー・ブルワーズ)も、優秀な成績の先発投手がいるため、そこまでの得票は見込めない。

 リリーフ投手を除くと、過去の受賞者のなかに、負け越した投手はいない。最も勝率が低かったのは、2010年に選ばれたフェリックス・ヘルナンデス(シアトル・マリナーズ)の.520。13勝を挙げ、12敗を喫した。フェリックスは白星も、受賞した先発投手では最少だ。1981年のフェルナンド・バレンズエラも13勝(7敗)だが、このシーズンはストライキを挟み、通常より試合が少なかった。

 また、1990年以降に防御率1点台を記録した延べ11人のうち、4人はサイ・ヤング賞を逃した。2015年はナ・リーグに防御率1点台が2人いたが、ロジャー・クレメンス(1990年、2005年)とケビン・ブラウン(1996年)の防御率は、受賞した投手と比べ、0.95以上も低かった。

 なお、デグロームは黒星を喫した7登板とも、クオリティ・スタート(QS)を記録している。この7登板に限っても、防御率は2.88だ。

 チームメイトのせいで、デグロームはサイ・ヤング賞を逃すことになるのだろうか。ニューヨーク・ポストのマイク・プーマらによると、デグロームが登板し、メッツが0対2で敗れた6月13日の試合後、トッド・フレイジャーはデグロームに「申し訳ない」と謝ったという。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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