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松井秀喜が殿堂の選考投票にかかるのは、日米ともに今回が最初で最後!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
松井秀喜と同じく、ジョニー・デーモン(左)も資格初年度 Sep 9, 2007(写真:ロイター/アフロ)

 引退から5年を経た松井秀喜が、日米それぞれの殿堂入り候補に挙がっている。

 日本の殿堂には、資格1年目にして迎え入れられるだろう。通算本塁打だけを取り上げても、NPBの332本とMLBの175本を合計した507本は、張本勲衣笠祥雄の504本を上回り、NPB歴代7位に相当する。NPBで480本塁打以上を放った9人のうち、殿堂入りしていないのは清原和博(525本)だけだ。

 本塁打王と打点王は3度ずつ、首位打者は1度。MVPも3度を数え、各リーグ1名の選出となった1950年以降では、山田久志イチローに並び、王貞治(9度)、長嶋茂雄(5度)、野村克也(5度)に次ぐ。

 一方、松井がMLBで獲得したタイトルはなし。アウォードも、2009年のワールドシリーズMVPこそあるものの、レギュラーシーズンでは、新人王、MVP、ゴールドグラブ、シルバースラッガーのいずれも受賞していない。新人王投票は2位、MVP投票は2004年と2005年に24位と14位にランクインしたにとどまる。

 今後、監督やGMを務めない限り、クーパースタウンに松井のプラークが飾られることはないだろうし、記者投票にかかる資格すら、今回限りで失いそうだ。

 翌年以降も候補に残るには、5%以上の得票率が必要とされる。このハードルはそう低くない。前回が資格初年度だった19人中、今回も候補者リストに載っているのは、ブラディミール・ゲレーロ(71.7%)とマニー・ラミレス(23.8%)の2人のみ。イバン・ロドリゲス(76.0%)は殿堂入りしたが、残る16人は得票率5%に届かず、候補から消えた。

 16人のなかに野手は14人いて、そのうち8人はMLBで松井より多くの本塁打を放った。例えば、得票ゼロのデレク・リーは、通算331本塁打を記録した。

 松井のシーズン30本塁打以上は10年間で1度、リーは15年間で4度。通算の打率(.282/.281)と出塁率(.360/.365)は2人ともほぼ同じだ。リーは一塁手として、3度のゴールドグラブと1度のシルバースラッガーを受賞した。2005年は首位打者を獲得するとともにリーグ・ベストのOPSを記録し、MVP投票で3位に入った。松井がリーに勝るのは、ポストシーズンの実績くらいだ。

 今回が資格初年度の野手10人のなかでも、松井の通算本塁打は8位に過ぎない。松井よりも少ない2人は100本塁打未満だが、オーランド・ハドソンはゴールドグラブを4度受賞し、オマー・ビスケルは11度も手にしている。候補者リストには、投手や資格2年目以降の選手も載っている。

 ただ、前に「MLBの殿堂候補。松井秀喜らが加わった一方、通算300盗塁や通算300セーブの選手が候補になれず」で書いたとおり、メジャーリーグで10年以上プレーし、引退から5年経てば、誰もが候補になるわけではない。

 ちなみに、野茂英雄は資格初年度の2014年に、日本で殿堂入りを果たし、米国では得票率1.1%に終わった。野茂に票を投じた記者は、571人中6人だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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