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治療目的の摂取というシャラポワの言葉は信じられる? 過去にそう説明したメジャーリーガーの例から考える

宇根夏樹ベースボール・ライター
マリア・シャラポワ MARCH 7, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

3月7日に開いた記者会見で、マリア・シャラポワはメルドニウムの摂取についてこう語った。

「最初は2006年。当時は健康上の問題をいくつか抱えていた。しばしば病気になり、マグネシウム欠乏症に陥り、家族が患った糖尿病の兆候が出ていた。あれは薬物治療の一つ」

パフォーマンス向上のためではなく、治療目的の摂取だったと説明したスポーツ選手は、彼女が初めてではない。

ボルティモア・オリオールズのクリス・デービスもその一人だ。2014年9月、デービスはアンフェタミンの陽性反応により、25試合の出場停止を科された。

デービスはADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬として、MLB機構から許可を得た上でアデロールを摂取していたが、2014年は免除措置を受けていなかったと説明した。アデロールはアンフェタミンを成分とする。

2015年1月のファン・フェストでデービスが語ったところによれば、2008年にADHDと診断され、アデロールを摂取し始めたという。デービスはその年の6月にテキサス・レンジャーズからメジャーデビューし、2011年7月に上原浩治の交換要員として、オリオールズへ移籍した。

デービスの件は非常にクリアで、完全に治療目的だったように見える。マニー・ラミレスが2009年5月に出した声明文と比べてほしい。そこにはこう綴ってあった。

「健康に問題があって医者に診てもらった。医者はステロイドではなく薬品として与えてくれたんだ、与えてもOKだと考えてね。残念ながら、それはドラッグ・ポリシーで禁じられていた」

ただ、デービスについても、いくつかの疑問は残る。例えば、なぜ免除措置を受けていなかったのか? なぜ最初に陽性反応を示した後も摂取したのか? ステロイドは最初の陽性反応で50試合の出場停止を科されるが、アンフェタミンの場合、出場停止は2度目からだ。さらに言えば、ADHDの真偽さえも疑うことができる。

デービスとシャラポワは、競技や薬物だけでなく、状況も違う。メルドニウムがワールド・アンチ・ドーピング・エージェンシーから禁止薬物に指定されたのは、今年1月のことだ(事前通達は前年9月)。

とはいえ、シャラポワのメルドニウム摂取が本当に治療目的だったとしても、デービスがそうであるように、パフォーマンス向上のためではないかという疑惑が完全に拭い去られることはないだろう。

他にも、共通していることはある。目的や理由がどうであれ、禁止薬物を摂取して、それが発覚すれば、処分を受けなければならない。また、処分が明ければ、競技に復帰することもできる。

デービスは昨シーズン、アデロールではなくバイバンセ(日本ではビバンセと呼ばれているようだ)摂取の許可を得た。バイバンセもアンフェタミンを成分とする点は同じだが、アデロールの方が即効性があるため、バイバンセがパフォーマンス向上の目的で用いられる可能性は低い。25試合の出場停止を終え、開幕2試合目から出場したデービスは、47本塁打を放ち、2013年に続いて2度目のタイトルを獲得した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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