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今年のメッツもそうなるか。スウィープでリーグ優勝し、中5日以上でワールドシリーズに臨むと勝てない!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ニューヨーク・メッツ/リーグ優勝 OCTOBER 21, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

今年のニューヨーク・メッツは、リーグ優勝を決めてからワールドシリーズ開幕まで、5日間のブランクを過ごす。シカゴ・カブスとのリーグ・チャンピオンシップ・シリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)を4連勝のスウィープで終わらせたためだ。一方、メッツとワールドシリーズで対戦するア・リーグのチームは、10月22日時点でまだ決まっておらず、カンザスシティ・ロイヤルズが第6戦に勝てば中3日、第7戦までもつれた場合はロイヤルズかトロント・ブルージェイズが中2日でワールドシリーズに突入する。

1969年に5試合(3戦先勝)のシリーズとして始まったリーグ・チャンピオンシップ・シリーズは、1985年から現在のような7試合(4戦先勝)となった。以降の31年間に、リーグ優勝からワールドシリーズ第1戦まで中5日以上が空いたのは、今年のメッツが16チーム目となる。リーグ・チャンピオンシップ・シリーズを4勝0敗で勝ち抜けたのは8チーム目だ。なお、4勝0敗のチームはすべて中5日以上でワールドシリーズに臨んでいる。同じ年に両リーグのチームが揃って中5日以上だったことはない。

これまで、中5日以上の15チーム中8チームはワールドシリーズで優勝している。このデータからすると、ブランクが空くことの影響はないように見える。ただ、2006年以降の6チームに限ると、ワールドチャンピオンに輝いたのは2008年のフィラデルフィア・フィリーズしかなく、他の5チームは敗れている。また、4勝0敗の7チーム中、ワールドシリーズを制したのは1995年のアトランタ・ブレーブスだけだ。敗退した6チームのなかには、サンディ・アルダーソンがGMだった1988年と1990年のオークランド・アスレティックスも含まれている。アルダーソンは現在、メッツのGMを務めている。

今年のメッツも、同じようにワールドシリーズで敗れてしまうのだろうか。いや、そう悲観することはない。これらはあくまで過去のデータであり、サンプル数もそれほど多くない。

1989年のアスレティックスは4勝1敗でリーグ・チャンピオンシップ・シリーズを終え、中5日で迎えたワールドシリーズでは4勝0敗でサンフランシスコ・ジャイアンツを下した(地震により、ワールドシリーズ第2戦と第3戦の間に11日間のブランクがあった)。もちろん、この時のGMもアルダーソンだった。また、1995年のブレーブスは先発投手陣にグレッグ・マダックストム・グラビンジョン・スモルツスティーブ・エイバリーの4人を擁していたが、その一人であるスモルツは今年7月に、1990年代のブレーブスと今シーズンのメッツの先発投手陣を比べて「彼らの方が優れている。我々よりも才能がある」とニューヨーク・デイリー・ニューズに語っている。さらに言えば、昨年のロイヤルズも、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ4勝0敗&中5日でワールドシリーズに進み、そこで敗れたものの、勝者と敗者は紙一重だった。第7戦の9回裏、1点を追うロイヤルズは2死ながら三塁に走者を置いていた。

メッツとしては、ブランクが空くことでダニエル・マーフィーのバットから快音が途切れてしまうことが懸念されるが、これは試合の間隔が詰まっていても打ち続けられるとは限らない(ここまでのマーフィーについては「どこまで続く「ダニエル・マーフィー祭り」。ポストシーズン新記録の6試合連続ホームランだけじゃない!!」で書いた)。むしろ、ブランクはヨエニス・セスペデスの左肩に回復の時間をもたらしてくれる。セスペデスはリーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第4戦の途中で、痛みを訴えて交代した。先発投手に関しても、ローテーションをどう組むかはまだわからないが、少なくともマット・ハービーにとってはいい休養になるだろう。ハービーはトミー・ジョン手術からの復帰1年目ながら、すでにレギュラーシーズンとポストシーズンで計202.0イニングを投げており、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第1戦では右上腕に打球を受けた。

メッツには、1990年のアスレティックスや2007年のコロラド・ロッキーズ、2012年のデトロイト・タイガースのようにはなってほしくない。この3チームは、4勝0敗のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズから一転、ワールドシリーズでは0勝4敗に終わった。今年のワールドシリーズは10月27日に開幕する。まったくの偶然で、さして意味があるわけでもないが、メッツではジョン・ニースと、ディビジョン・シリーズで右足を骨折したルーベン・テハダの誕生日だ。ロイヤルズとブルージェイズに、この日が誕生日の選手はいない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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