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地区首位を快走するロイヤルズが、ポストシーズンの前に遭遇した思わぬ難敵

宇根夏樹ベースボール・ライター
カンザスシティ・ロイヤルズ/#15 アレックス・リオス Aug 1, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

カンザスシティ・ロイヤルズはア・リーグ中地区を独走している。2年連続リーグ優勝の可能性も十分にある。ところが、ここへきて、思いもよらぬ難敵に遭遇した。8月28~30日のタンパ遠征中に、外野手のアレックス・リオスとセットアッパーのケルビン・ヘレーラが、水疱瘡にかかっていることが発覚した。

どうやら、リオスが先に感染し、それがヘレーラにうつったらしい。2人が復帰するまでには、少なくとも2週間を要する見込み。8月末に、ロイヤルズがアトランタ・ブレーブスからジョニー・ゴームズを獲得したのも、リオスの離脱が理由の一つだ。

MLB.comのジェフリー・フラナガンによれば、クリス・ヤングアレックス・ゴードン、ゴームズ、サルバドール・ぺレスエディンソン・ボルケスは、子供の頃に予防接種を受けており、アルシデス・エスコバーは偶然にも、アメリカの市民権を得る手続きの一つとして、約2週間前にワクチンを接種している。これらのことは、予防接種を受けておらず、水疱瘡にかかったこともない選手も何人かいることを――まさか他の全選手ではないだろうが――示しているように思える。

幸いにも、その後、ロイヤルズで水疱瘡を発症した選手はいない。リオスとヘレーラにしても、ポストシーズン(プレーオフ)まで1ヵ月以上を残す、この時期でよかったと言うべきか。

特に、リオスはメジャーリーグ12年目にして、ようやくポストシーズンに辿り着こうとしている。彼がレギュラーシーズンで出場した1668試合は、ポストシーズンを経験していない現役メジャーリーガーでは最も多い。次いで多いホゼ・バティスタ(トロント・ブルージェイズ)も同じく12年目で、こちらも初のポストシーズンに近づいているところだが、出場試合はリオスよりも300近く少なく、ほぼ2シーズン分の差がある。

リオスはこれまでに2度、夏のトレードを経験している。そのどちらもポストシーズン進出をめざすチームへ移ったが、2009年のシカゴ・ホワイトソックスは勝ち越しすらできず、2013年のテキサス・レンジャーズはワンゲーム・プレーオフ――ポストシーズンではなくレギュラーシーズンの163試合目――に敗れ、ワイルドカードの2番手を逃した。また、リオスが2010年にプレーしたホワイトソックスは88勝を挙げたが、この年のポストシーズン進出には、少なくとも90勝が必要だった。

健康さえ取り戻せば、リオスのポストシーズン初出場は確実だろう。ゴームズがロースターに入れるかどうかは微妙だが、リオスは今シーズン、ライトのレギュラーを務めてきた。ロイヤルズは地区優勝が確実なので、昨年のアダム・ダンのようなことも、リオスには起きない。

昨年の8月末、ダンはホワイトソックスからオークランド・アスレティックスへ移り、アスレティックスはワイルドカードの2番手として、ポストシーズンへ駒を進めた。ダンはメジャーリーグ14年目にして初めて、ポストシーズンに到達した。だが、第1ラウンドのワイルドカード・ゲームは延長12回までもつれたにもかかわらず、ダンが出場することはなく、アスレティックスはロイヤルズに敗れた。その直後に、ダンは引退を表明。レギュラーシーズンの出場2001試合と462本塁打は、ポストシーズンに出なかった選手ではそれぞれ14番目と2番目に多い記録――最多はいずれもアーニー・バンクスで、2528試合と512本塁打――として残っている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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