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岩隈久志のノーヒッターにまつわる7つの珍しい事柄

宇根夏樹ベースボール・ライター
岩隈久志(シアトル・マリナーズ)AUGUST 12, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

今シーズンの達成は岩隈久志(シアトル・マリナーズ)で4度目ながら、ノーヒッターはそれ自体が珍しい偉業だ。岩隈が8月12日のボルティモア・オリオールズ戦で演じたノーヒッターには、こんな珍しさもあった。

●ナ・リーグの連続ノーヒッターに終止符

ア・リーグのノーヒッターは、2012年8月15日にフェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)が完全試合を達成して以来のことだ。キングとクマ――フェリックスと岩隈――の間には、ナ・リーグで12度のノーヒッターが演じられた。ア・リーグができた1901年以降、一方のリーグだけにこれほどノーヒッターが続いたことはなかった。ただ、過去には、1908年9月18日から1912年8月30日にかけて、ア・リーグで9度のノーヒッターがあり、その間、ナ・リーグでは皆無だったことがある。

●ア・リーグではマリナーズが3連続

岩隈を含め、ここ3度のア・リーグのノーヒッターは、いずれもマリナーズによるものだ。ケビン・ミルウッドら6投手による継投(2012年6月8日)、フェリックス・ヘルナンデスの完全試合(2012年8月15日)、そして、岩隈とマリナーズが続いている。ア・リーグのノーヒッターが3度続けて同じ球団によって達成されたのは、1996~99年のニューヨーク・ヤンキースに次いで史上2度目。ヤンキースは、ドワイト・グッデン(1996年5月14日)、デビッド・ウェルズ(1998年5月17日)、デビッド・コーン(1999年7月18日)の順で、2人のデビッドは完全試合だった。ナ・リーグでも、1960~61年にミルウォーキー・ブレーブス(現アトランタ・ブレーブス)が、他7球団のノーヒッターを挟まずに3度続けている。ちなみに、マリナーズを除くア・リーグの球団では、2012年5月2日にロサンゼルス・エンジェルスのジェレッド・ウィーバーが記録したノーヒッターが、現時点の最後だ。

●セーフコ・フィールドはノーヒッター天国?

セーフコ・フィールドは1999年7月15日に開場しており、ここを舞台に演じられたノーヒッターは、2012年4月21日にシカゴ・ホワイトソックスのフィリップ・ハンバーが演じた完全試合を皮切りに、岩隈で4度目となった。この期間に、セーフコ・フィールドではどの球場よりも多くのノーヒッターが生まれている。岩隈が達成するまでは、フェンウェイ・パーク、USセルラー・フィールド、ターナー・フィールド、AT&Tパークも3度ずつで、セーフコ・フィールドと並んでいた。なお、マリナーズの投手によるノーヒッターはすべて本拠地で、キングドームが2度、セーフコ・フィールドが3度。マリナーズ以外では、ニューヨーク・メッツとタンパベイ・レイズのノーヒッターも本拠地のみだが、この2球団は1度ずつしか達成していない。

●34歳のノーヒッター

岩隈は34歳122日でノーヒッターを達成した。これは、1投手が投げきったノーヒッターでは、2004年5月18日にアリゾナ・ダイヤモンドバックスのランディ・ジョンソンが40歳251日で完全試合を演じて以来の高齢だ。ビッグ・ユニットとクマの間には、2度の継投を除くと33度のノーヒッターがあり、そのなかでは、34歳10日で成し遂げたジョシュ・ベケット(2014年5月25日)が最高齢だった。また、2012年6月8日に6人がつないだノーヒッターで、先発として6イニングを投げた時のケビン・ミルウッドは37歳167日。ベケットもミルウッドも、その年を最後にユニフォームを脱いでいる。ただし、ランディは2009年まで投げ続けた。

●88先発目の初完投

岩隈のノーヒッターは、メジャーリーグでは初の完投でもあった。実は、初完投でノーヒッターというケースは意外に多く、21世紀のノーヒッター40度(継投の3度を除く)のうち、岩隈を含めて11度がそうだった。そのなかで、岩隈の88先発目はフランシスコ・リリアーノの95先発目(2011年5月3日)に次ぐ遅さ。クレイ・バックホルツは2先発目(2007年9月1日)だった。また、バド・スミス(2001年9月3日)、ジョナサン・サンチェス(2009年7月10日)、フィリップ・ハンバー(2012年4月21日/完全試合)の3人は――少なくとも現時点では――ノーヒッターがキャリア唯一の完投だ。

●8月12日のノーヒッターは史上初

岩隈が達成するまで、8月12日のノーヒッターは一度もなかった。前日の8月11日はバーン・ビックフォード(1950年)とウィルソン・アルバレス(1991年)、翌日の8月13日にはジム・パーマー(1969年)が、ノーヒッターを演じている。

●HIのノーヒッターも史上初

これまで、岩隈の他にメジャーリーグで登板したイニシャル「HI」は、伊良部秀輝ら4人だけ。そのなかに、ノーヒッターを達成した投手はいない。一方、イニシャル「NR」のノーヒッターは8度を数えるが、1908年9月5日のナップ・ラッカー――フルネームはジョージ・ナポレオン・ラッカー――以外の7度は、ノーラン・ライアンによるものだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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