最近「空白恐怖症」という言葉が話題に上っています。テレビ番組で紹介され、SNS上では「私のことだ」「理解できない」などさまざまな声も見られたようです。「空白恐怖症」とはどういうものか、その心理と対策と考えます。

「病名になぞらえた言葉」

「空白恐怖症」とは「第3回大辞泉が選ぶ新語大賞2018」の大賞として選ばれた言葉で、デジタル大辞泉 によると「ス ケジュール帳に空白が多く、予定が記入されてい ない状態に不安を感じること。そういう気持ちになることを病気の症状になぞらえた言葉。」(デジタル大辞泉,2019)とされています。正式な病名ではないにもかかわらず、そういう疾患があるように錯覚してしまう人が多いのは、「自分はそうかな」と思う傾向を持つ方が多いからかもしれません。

「昔からある空白恐怖」

最近は、「リア充」という表現をしばしば耳にします。現実の対人関係が充実している人がいい、という風潮があるために、他人と会う約束もなく暇な時間を過ごすことに不安や恐怖を感じたり、周りから「人気がない人」と思われるのは怖いと思う心理が働くのではないでしょうか?

最も、「スケジュール帳を真っ黒にしていないと気が済まなくて」暇だと不安になるという傾向は今に始まった現象ではないのです。古くは1959年、アメリカの循環器内科医であるフリードマンとローゼンマン博士により提唱された「タイプA」という性格傾向は、心筋梗塞のリスクが高い傾向ですが、いくつもの仕事を同時に行い、仕事に追われ、他人からの承認欲求が強いという特徴を持ち、スケジュールを一杯にしておかないと不安になるというものでした。このころのスケジュールはあくまで仕事であり、仕事を一杯にしていることが評価につながるという心理でしたが、今のスケジュールは仕事だけではなく友人とのかかわりなどを含めるという違いはあります。ただ共通しているのは「空白はよくないのではないか」という不安と暇だと人から評価されないと思ってしまうという点といえます。

空白が怖いという人は、何かしていないと、時間を無駄にしているような気分になったり、このままでいいのかという思いが生まれたり、自分がだめな人間になったように感じたり、人から求められていない人間なのではないかと考えたり、人が忙しくしているのをSNSで見て自分と比較したりということで不安が生まれると思われます。

本来は、自分がしなければいけない義務を済ませたら、あとは自分時間を自由に使い、一人の時間を楽しみ充実させることで不安の芽をなくすことが出来るものです。

空白を不安から楽しみに変える

さて、空白の時間を不安にならず充実して過ごすために必要な要素の一つは、ポジティブサイコロジー医学の視点では「ユーダイモニア」の楽しみ方をしているか否かということが言えると思います。「ユーダイモニア」とは、個人的な充実感のある活動をしているときの感覚を言います。自分の可能性を活かしたり、努力したりするときの充実感を楽しんでいると、その時に生まれる幸福感は持続し自分のアイデンティティを作り出します。このことで人との比較をしなくなり、空白の時間があっても否定的な感情は生まれにくいといえます。

「ユーダイモニア」といわれると難しく感じますが、仕事の他にまずは人との比較ではなく自分が興味をもち努力が大変ではあるが嫌ではないことを日常生活のなかに加えるなどの小さなステップが大事といえるでしょう。そうした時間があることで空白の時間を楽しめるように変化していくはずです。