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ryuchellさんの訃報 報道でつらい思いをしている人の心の対処法

海原純子博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授
写真はイメージです。(写真:イメージマート)

テレビやYouTubeで活躍するryuchell(りゅうちぇる)さんが亡くなったことが報道されました。日頃ryuchellさんのYouTubeでの発言を聞いて、いろいろ乗り越えてきたしっかりとした芯のある人、自分らしい生き方を貫いている人、と感じてファンだったという方から、自殺ということでショックを受けたという声を聞きました。実際に面識はなくてもテレビなどで活動を見て身近に感じていた方には衝撃になります。そのような時、どのように心を保ち癒すかについて考えます。

「ネガティブな同一化」に気をつける

実際に面識がなくても身近に感じている人の自死の場合、気がかりなのが「ネガティブな同一化」です。ryuchellさんの訃報報道を見て自分もゆううつになったという方はこうしたネガティブな同一化に陥っているリスクがあります。身近な方の死により、身体的不調をきたしたり、自分も死にたくなったりすることが多くなることがあります。これがネガティブな同一化です。

特に同じような年代の方や自分らしい生き方を模索している人は、共感する部分が多かったryuchellさんが亡くなったことで「ryuchellさんのように生き生きと発言し活躍している人でも亡くなるなら、自分はうまくいくわけがない」というように感じてネガティブな同一化を起こしてしまうリスクがあります。

不安な気持ち、どう対処すればいい?

まずは「気持ちを言葉にすること」をお勧めします。言葉にしてつらい気持ちや悲しい思いを表現することが大事な癒しへの一歩になります。「実際には知らないけれど身近に感じている人がなくなるとつらいね」というように、つらさを表現することは大事です。同じ思いをしている方は多いと思います。ただ「何が原因だったのか」「ネット中傷が影響したのか」など憶測や詮索をすると、さらに気持ちが落ち込む原因にもなります。憶測や詮索、噂話はしない、聞かない、シェアーしないことが大事です。

「言葉にすること」が苦手な人はどう対処?

つらくても我慢して人に助けを求めたりつらいと言えない人がいます。タレントさんの死でショックを受けたと言いにくい人もいると思います。つらくても平気な顔をして振舞ったり、つらさを紛らわすためにアルコールの力を借りたりすることも多いものです。言葉にするのは苦手で、自分は気持ちを抑え込む傾向があると思う方は身体を動かすことが気持ちをすっきりさせるのに役立ちます。言語化が難しい、つまり言葉で表現するのが苦手な方は、身体を動かすことが感情の表現になるからです。外を歩くのが暑い場合は室内でストレッチをするなどしてみてください。また気持ちをノートに書く、絵を描く、楽器の演奏をするなども感情表現になります。

今年の7月に気をつけたい睡眠の質確保

今年は、天候が急に変化したり、気温も高く、身体が気候の変化に適応しにくい季節で自律神経の調整が難しく体調が不安定な方も増えています。また蒸し暑いために睡眠障害が起こり、身体の不調により心が落ち込むことが多いので体調管理が特に重要です。この時期に睡眠の質を確保するために次のような対策があります。

朝窓を開けて太陽の光を浴びる

深呼吸とストレッチを朝、昼、夜の決まった時間に5~6分ずつ行う

睡眠の質を高めるために寝室の温度や湿度を管理する

寝る前2時間のパソコン、スマホ使用はやめる

ぬるめのお風呂にエプソムソルトなどを入れて入る

博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授

東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。日本医科大学医学教育センター特任教授(~2022年3月)。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを再開。

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