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深田恭子さん活動再開で考える 適応障害から職場復帰した方への接し方

海原純子博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授
写真はイメージです。(写真:アフロ)

適応障害で5月から休養に入っていたタレントの深田恭子さんが体調を回復して復帰という報道がありました。「適応障害」という名前をご存知の方は多くなったと思います。しかし、ストレスと関係があることは知っているけれど、どんな症状があり、復帰した方にどのように接するかをご存知の方はまだ多くはありません。そこで、適応障害について、復帰した方にどのように接するかも含め知っておきたいことをまとめてみました。

適応障害とは

適応障害とは、環境が変わるなどはっきりしたストレス要因があってから3カ月以内に起こる症状をいいます。症状は人により異なりさまざまですが、睡眠障害やうつ気分や集中力低下、食欲低下や胃腸障害などいくつかの症状が組み合わさって出現することが多いといえます。仕事の量が急に増えたり、部署が変わったり、自分には不向きな内容の仕事が多かったりなどする場合に起こりやすいといえます。みなさんがよくご存じの新入社員や新入生のいわゆる5月病、6月病などもこの適応障害とひとつと言えます。

治療としては、まず体調を元に戻す為にストレスを軽くすることを目的に休養し十分な睡眠をとれるようにしながら必要な場合は投薬治療を行います。多くは1か月から数か月の治療を経て、症状が改善し、体調や生活リズムが元に戻った場合に職場復帰になりますが、大事なことは、適応障害に陥る要因になった環境の改善と本人の適応力のアップの二つが大事だということです。ストレス要因になった仕事などの環境を変え、負担を軽くして本人が受け入れやすい環境に組み替えることが必要です。せっかく本人の体調が回復したのに、職場の状況が相変わらずということではまた体調を崩すことになります。

ものの見方の癖に注意

適応力はその方のものの見方や考え方の癖とかかわりがあります。次のような傾向は適応障害に陥りやすい思考回路です。その方ご自身でご自分の傾向について把握しておき、ものの見方に柔軟性を持つことが適応力を増やすために必要です。

1.嫌なことや困難なことを一人で抱え込んでしまう傾向

2.我慢しすぎで愚痴をこぼせない傾向

3.完璧主義の傾向

4.自分に厳しすぎる傾向

周りがどのように接するか

職場復帰してきた方に周りがどのように接するかは、こうしたことを把握したうえで以下のような注意が大事です。

1.腫れ物に触るような特別扱いをしない

2.相談しやすい雰囲気をつくる

3.周囲がお互いに気楽に話し合える時間や場所を作る

4.仕事の量や質・裁量権で自由度を増やす

まとめ

怪我や病気で復帰してきた方にはごく自然に「おかえり」と言えるのに、適応障害などで復帰してきた方には何か特別なことをしなくては、と身構えてしまう傾向がありますがそれはかえって本人の負担になります。「おかえり」という雰囲気で自然に迎えてほしいと思います。またご本人が悩みや仕事の量や質で負担が多かったり仕事の進め方で自分の裁量権がなくやりにくい場合にそれを口に出せる状態を作ることが何より必要と言えます。

博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授

東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。日本医科大学医学教育センター特任教授(~2022年3月)。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを再開。

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