一人で思い詰めないで 新型コロナ自宅・宿泊療養者の心を守る

イラストはイメージです。(提供:RURI_BYAKU/イメージマート)

新型コロナウイルスに感染し東京都内で自宅療養中だった30代女性が自殺していたという痛ましい報道がありました。女性は夫と娘との3人暮らしで、「自分が周りにうつしたのではないか」と悩んでいたということです。

新型コロナウイルスに感染した方の心のケアも大きな課題であることが浮き彫りになりました。軽症や無症状で入院不要と診断されても、自宅やホテルで療養することが大きなストレスになることを知っていただきたいと思います。

症状急変の不安や孤独感

一つは、症状悪化の不安です。コロナ感染により自宅療養を経験した方のお話を伺うと「いつ急激に症状が悪くなるかという不安で緊張が続いていた」と言います。また症状が急変した場合すぐに医療機関を受診できるかという不安もあるのです。

さらに、孤独感がひどく社会から切り離された感じがしたということです。検査の現場で自分の周りの人たちが防護服を着ていたという光景がショックだったとも言います。看護師や保健師などから1日に何回か連絡が入りますが、会話は数分で終わります。

自宅療養で同居家族がいる場合は、家族にうつしたらどうしようという不安が加わります。生活空間を分ける必要があるため、同居しているのに一緒にいられないというフラストレーションが起こります。幼い子供がいる場合は、世話ができない、抱きしめてあげられないつらさ、子どもが寂しい思いをしているのではないかという心配などが起こりやすくなります。家族や身近な人たちも感染が確認された場合は、自分がうつしたのではないか、という罪悪感が重なったりします。

感染したことで差別や非難を受けるのではないかという不安もあります。実際にSNSで自分に関する噂話や中傷が流れていると知った場合はさらに心が傷つきます。いずれコロナの療養が終わっても、その先の未来はないような気分に追い込まれることもあります。さらにコロナの後遺症の不安なども重なるのです。

つまり自宅療養や宿泊療養の方たちは、症状はそれほどひどくないとはいえ、健康面の不安に加えて、孤独感や世間体などのストレスが大きいのです。

自分でできる対策と周りの手助け

ではどのようにそのストレスに気がつき対処すればよいのかを考えたいと思います。

まず、自宅療養や宿泊療養の孤独感を埋めるために、ビデオ通話やSNSのメッセンジャーなどを利用して、誰かとオンラインで一緒に食事したり会話したりする時間を決めておきます。生活リズムを整えておくことも大事です。普段と同じ時間に起床し就寝するようなリズムで生活することで自律神経の乱れを防止できます。

また室内でできることを用意します。本、音楽、映画などで、集中したりリラックスしたりできるといいです。療養先のホテルにたくさんのCDとDVD、PCを持ち込んだという方もいます。

身体を軽く動かしたりストレッチすることも必要です。

症状が急変した場合どこにどのように連絡すればよいか、担当の医療関係者に聞いておくことも必要です。血中の酸素飽和度を測る「パルスオキシメーター」があれば利用して、重症化のサインをいち早く確認できるようにしておくと不安が軽減するはずです。

それと同時にご自分の気持ちを時々チェックしてください。一人で外出もせず同じ場所でじっとしていると、それだけで心のエネルギーは低下するのです。エネルギーが低下するとうつ状態に落ち込みやすくなります。

□将来に希望が持てない

□自分はいないほうがいい

□自分は役に立たない人間だ

□死んだ方がましだ

こんな気持ちは、心のエネルギーが低下しているサインです。1つでも当てはまる場合は、まず身近な人や相談機関にすぐ連絡してください。

厚生労働省 電話相談窓口

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_tel.html

また周りの方ができることもあります。電話などで声がけしたり、代わりに日常的な買い物やペットの世話を引き受けたりすれば、孤独感を軽くする手助けになるでしょう。

東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。2013年より日本医科大学医学教育センター特任教授。2018年昭和女子大学特命教授。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを近年再開。

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