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新人史上初のV決定サヨナラ打!東京ヤクルトの丸山和郁は明治大学時代も勝負強かった

上原伸一ノンフィクションライター
東京ヤクルトの「セ」連覇を決めたのは明大出身のルーキー・丸山だった(写真:イメージマート)

印象深い「ここで決めなければ男じゃない」という言葉

ヤクルトが劇的なサヨナラ勝ちで、セ・リーグ連覇を飾った。決めたのは途中出場のドラフト2位ルーキーの丸山和郁だった。リーグ優勝決定試合で、ルーキーがサヨナラ打を放ったのは史上初である。

丸山は昨年の明治大学の主将だ。大学時代も抜群のキャプテンシーがあり、大学時代からここ一番で勝負強さを発揮した選手だった。

それは他校にも認識されていた。昨年、東京六大学の他大学の応援部で幹部を務めたある人は、丸山が快挙を成し遂げた直後、「丸山は持ってる選手なんですよね、キャプテンシーもそうだが、ここぞで決め切る能力が学生時代からずば抜けてる」(ママ)と祝福のツイートをしている。

真骨頂を発揮したのは昨秋のリーグ戦、立教大学との2回戦だった。負ければ優勝が遠のく、大事な試合だった。だが、1点ビハインドのまま、最終回へ。9回もツーアウトと追い込まれた。

2、3塁の場面で登場したのが、ここまで4打席で凡退していた丸山だった。熱き思いを秘めつつも、頭の中は冷静だった。打席に入る前、センターがバックホームに備え、前進しているのを確認していた。

するとその初球、ストレートのタイミングでスライダーをとらえる。打球はセンターの頭を越え、2者がホームイン。丸山のサヨナラ打が優勝に望みをつないだ。

試合後の会見が印象的だった。「どのような気持ちで打席に立ったか?」と訊ねられるとこう答えた。

「ここで打たなければ、キャプテンじゃない。男じゃないと思ってました」

世はジェンダーの時代だ。箱根駅伝で駒澤大学の大八木弘明監督が監督車から「男だろ!」とゲキを飛ばしただけで、物議をかもしてしまう。男子に向けての「男のくせに」という言葉も、タブー視されている風潮もある。

それだけに、令和の学生がキッパリと、自然に口にした「男」という言葉はとても新鮮で、耳に残ったのだ。

サヨナラ打で試合を決めた後も丸山らしかった。歓喜に沸くベンチに目をやると、入学以来苦楽を共にした同期で、エースの竹田祐(現・三菱重工West)の姿が。前日の1回戦で1失点完投勝ちしていた竹田は、この試合での登板はなかったが、誰よりも大きな声を出し、チームを盛り上げていた。

その竹田が喜んでいる。一瞬、目頭が熱くなったが、優勝するまではと、ぐっとこらえた。

結局、この丸山にとって最後のシーズン、優勝は果たせなかった。だが、大学時代の気概そのままに、プロの世界で優勝を決める大仕事をやってのけた。

神宮球場での祝勝会では「サヨナラ漢です」と記されたタスキをかけて参加したという丸山。

打席に入る前、ここで打たなければ男じゃない、と思ったのだろうか?

ノンフィクションライター

Shinichi Uehara/1962年東京生まれ。外資系スポーツメーカーに8年間在籍後、PR代理店を経て、2001年からフリーランスのライターになる。これまで活動のメインとする野球では、アマチュア野球のカテゴリーを幅広く取材。現在はベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」、「大学野球」、「高校野球マガジン」などの専門誌の他、Webメディアでは朝日新聞「4years.」、「NumberWeb」、「スポーツナビ」、「現代ビジネス」などに寄稿している。

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