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今井瑠々氏の立憲離党、自民入り 支持はしないが、同情する

常見陽平千葉商科大学国際教養学部准教授/働き方評論家/社会格闘家
(写真:アフロ)

■あなたは若者の早期離職を糾弾しますか?

「ウチの会社から逃げるのか?卑怯者!」

「これだけ育ててやったのに、辞めやがって!」

「すぐに辞めるなんて、石の上にも3年だ!」

若者が早期離職したときに、あなたはこのような言葉を浴びせるだろうか?きっとそうではないと信じたい。このような言葉はハラスメントまがいの言葉である。働く人には職業選択の自由がある。

15年くらい前は、若者の早期離職について、打たれ弱い、自分探しが止まらないなどの批判的な言説があった。ただ、「ブラック企業」が社会問題化し心身ともに追い込まれてしまうことがあることなどから、このような批判は適切ではないという理解が広まった。若者の早期離職は、現実を見た上での人生のチューニングとも見ることができる。

新型コロナウイルスショックがあったものの、若年層に対する求人ニーズは強い。早期離職しても、転職できる可能性は高い。日系企業に対して「GAFA予備校」と揶揄する声があるが、実際、ここで力を積んで(必ずしもGAFAにはいけるわけではないが)、外資系のIT企業、コンサルティング企業などに転職する若者もいる。若者がより働きがいのある、待遇のよい企業に移ることは、いざ去られる側からすると複雑な心境になるし、特に外資系企業への人材流出については危機感を抱く人もいるだろうが、よりよい環境を選ぶ権利は否定してはいけない。

■なぜ、今井瑠々氏はここまで叩かれないといけないのか?

2021年の衆議院選で、立憲民主党から全国最年少の25歳で立候補し落選した今井瑠々氏が、同党に離党届けを出した。自民党入りし4月の岐阜県議選に推薦を受けて出馬する予定だという件が大炎上している。

報道によると、衆院選で争った古屋圭司衆議院議員が、推薦候補として今井氏を紹介したという。今井氏の方から自民党にアプローチがあったと報じられ、古屋氏が「非自民で運動してきた皆さんをしっかりこっちに取り込んでもらう」と発言したとされ、「節操がない」などと批判が殺到した。立憲民主党の泉健太代表が「党に対する反党行為」「政治の道からも外れた行為」「当然処分は何らか行われるものだ」と発言したと報じられている。

 資金援助も受けてきた上、支持してきた人もいるわけで、今井氏のアクションは立憲民主党の関係者、同党や彼女の支持者からは批判されてもしょうがないだろう。ましてや、昨年から水面下で彼女の方から自民に働きかけてきたというならなおさらだ。「裏切り者」「節操がない」と批判したくなる人もいることは理解できる。

 ただ、彼女をこのまま叩いていいのか?

 政治の道を志す者を潰してしまっていいのか?

 若さ故の過ちというものもあるのではないか?

 まず政治家になることが大事だ、と考えるのもまっとうな意見ではないか?

 そもそも、政党の移籍など日常茶飯事ではないか?

 様々な経歴、思想信条の人を良くも悪くも飲み込んでいくのが自民ではないか?

 その政党自体、与野党ともに軸がブレること、方針が転換することはないのか?

 このような視点から考えると、彼女は叩かれすぎではないか?若いから女性だから叩かれているのではないか?もちろん、政治家に老若男女は関係ないとも言えるのだが。

■立憲民主党の女性議員支援は十分だったか?

 なお、至近距離で見聞きしてきた立場から、立憲民主党の女性候補者擁立の動きについては、強く批判したい。女性候補者を数多く立てたことや、泉代表が誕生した際に執行部の女性比率を高め、パリテを目指したことは評価する。一方で、当選するようにバックアップしないのならば、それは犠牲者を増やしているだけではないか。

 私自身、友人の井戸まさえ氏が長年活動していた選挙区から、衆院選直前に転区を打診された一部始終を間近で目撃している。支持者向けの説明会で、長妻昭氏は全力での支援を約束したが、申し訳ないが、十分だったとは言い難い。

■今井氏の叩かれっぷりをみて、若者は「政治家になりたい」と思うだろうか?

 今回の今井氏の叩かれっぷりを見て、社会を変えたい、世の中を良くしたいと考える若者はどう思うだろうか。そうか、政治というのはこんなに面倒くさい世界なのかと思うのではないか。民間企業で、起業・社会起業で、あるいは個人として世の中を変えようと思い、政治家など目指さなくなるのではないか。「社会の変え方」も、変わっているのだ。民間企業なら、退職、転職しただけでここまで叩かれまい。

 私は選挙ウォッチャーであり、昨年は選挙取材レポートが全国紙に掲載され、やはり全国紙の開票速報番組にも出演した。何度か選挙前に全国紙にインタビューが載ったこともある。とはいえ、政治は素人である。領空侵犯的な意見を不愉快に思う人もいることだろう。ビジネスパーソンとしてのキャリア形成と、政治家を一緒にするなという批判もあるだろう。

 私は親子3世代にわたる反自民一家で育った。右か左かというと、明確に左翼である。「会いに行ける左翼」を自称している。これまで数回にわたり、立憲民主党の候補者の応援演説を行っているし、同党や国民民主党の議員数名の後援会にも入っている。そうであるがゆえに、私にも裏切り者、忘恩的という批判もあるだろう。

 くれぐれも、政治家、およびその候補者として、今井瑠々氏は評価も支持もしない。朝日新聞のコメントプラスに何度も投稿し、彼女が衆議院選に立候補した際の報道に関連して、政治家としての覚悟、姿勢などについて警鐘を乱打してきた。

 ただ、若者のキャリア形成という観点から、さらに政治家を職業として捉えた点からも、今回の件の叩かれ方は過剰ではないか、これは政治を志す若者に負の影響を与えないかと考え、微力ではあるが無力ではないと信じ、勇躍決起した次第である。立憲民主党や自民党を嫌いになっても、私を嫌いになっても、今井瑠々をこれ以上、叩かないで頂きたい。自民で県議を目指し、力をつける。それも選択としてありではないか。政治を志す若者を潰すな。「意識高い系」の仕掛け人である私が、ここまで擁護することの意味を感じとってほしい。

千葉商科大学国際教養学部准教授/働き方評論家/社会格闘家

1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。 リクルート、バンダイ、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。2020年4月より准教授。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

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