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【2輪モータースポーツ】2017年の10大ニュース(5位〜1位)歓びと悲しみが交差した1年に

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
5月に不慮の交通事故で亡くなったニッキー・ヘイデン【写真:本田技研工業】

Yahoo!ニュースオーサーとして選ぶ2輪モータースポーツの「2017年の10大ニュース」。MotoGPを中心に盛り上がった2輪レースのニュースの中で、前回の記事で選んだ10位から6位は以下の通り。

【2輪モータースポーツ】2017年の10大ニュース(10位~6位)

10位:KTMがMotoGPにフル参戦

9位:複数の日本人ライダーがWSSに参戦

8位:モリワキが鈴鹿8耐に復帰参戦

7位:野左根航汰がルマンで表彰台に

6位:マルケスが4度目のMotoGP王者に

それでは5位から1位までをご紹介しよう。

5位:ジョナサン・レイがWSBK三連覇

市販車ベースのスポーツバイクで争う「スーパーバイク世界選手権(WSBK)」は今年もジョナサン・レイ(カワサキ)の横綱相撲だった。2015年にホンダからカワサキファクトリー「Kawasaki Racing Team」に移籍し、チームメイトのトム・サイクスを上回る走りを披露して2016年まで同選手権を連覇したレイ。今季のチーム体制は変わらずのシーズンとなった。

東京モーターショーにも展示されたスーパーバイク世界選手権(WSBK)の最強マシン、カワサキZX-10RR
東京モーターショーにも展示されたスーパーバイク世界選手権(WSBK)の最強マシン、カワサキZX-10RR

近年の「スーパーバイク世界選手権(WSBK)」ではカワサキが圧倒的なリードを築いている。しかし、昨年からドゥカティの「パニガーレR」が徐々にカワサキとの差を詰めており、今季はドゥカティにベテランのマルコ・メランドリが復帰。いよいよカワサキの連勝街道もストップするかに思われた。

シーズンが幕を開けてみるとやはりカワサキ、というかジョナサン・レイの強さが際立った。レイは開幕戦のオーストラリア、タイと4連勝。第3戦のアラゴンのレース2でチャズ・デイビス(ドゥカティ)に優勝を譲るが、開幕戦からの8レースで7勝をあげ、序盤戦にして早くもシリーズの流れを手中にする。今季、WSBKはレースを面白くするために第2レースのグリッド決定方法を変更し、波乱を起こそうと演出するが、決勝レース中のレイの安定ぶりと駆け引きの巧さには全くもって効果なしとも言える状態に。チャズ・デイビスのリタイアが多く早々にチャンピオンはジョナサン・レイで決まったが、シーズン中盤でのドゥカティの躍進、カワサキとのドッグファイトは見ごたえのあるものだった。

ジョナサン・レイは前人未到のWSBK三連覇を達成。来季もその強さは変わらないだろう。なお、ドゥカティは伝統の2気筒を捨て4気筒のエンジンを搭載する新型スポーツバイク「パニガーレV4」をリリースするが、来季のエントリーリストは「パニガーレR」となっており、新型の実戦投入は2019年以降となる。

WSBKで王者に君臨するジョナサン・レイ。鈴鹿8耐でも優勝経験があるライダーだけに次はぜひカワサキでの8耐を見たいところだが。

選考理由まとめ

・レイがWSBK史上初の三連覇

・レイの圧倒的な強さが光ったシーズン

・来季もカワサキで四連覇を狙う

4位:ホンダが全日本三種制覇、来季ロードはワークスへ

2017年の国内2輪モータースポーツはホンダイヤーとなった。全日本ロードレース選手権JSB1000では高橋巧が、全日本モトクロスIA1では山本鯨が、そして全日本トライアルIASでは小川友幸がシリーズチャンピオンを獲得。昨年の世界選手権三冠に続き、今季は全日本最高峰クラスの三冠を達成した。また全日本ロードレース選手権ではJ-GP2(600cc)で水野涼が、J-GP3(250cc)では伊達悠太が王座を獲得し、4カテゴリー中3つのタイトルを取る活躍ぶりをホンダのライダーたちが見せたのである。

全日本ロードレースのチャンピオン会見。左から高橋巧(JSB1000)、水野涼(J-GP2)、前田恵助(ST600/ヤマハ)、伊達悠太(J-GP3)
全日本ロードレースのチャンピオン会見。左から高橋巧(JSB1000)、水野涼(J-GP2)、前田恵助(ST600/ヤマハ)、伊達悠太(J-GP3)

ただ、ホンダにとって国内ロードレースは決して満足の1年ではなかった。JSB1000と鈴鹿8耐では新型マシン、ホンダCBR1000RR SP2を投入したが、ヤマハYZF-R1を凌駕するには至らず。ほぼワークス体制に近い状態で挑んだ鈴鹿8耐でもヤマハの先行を許した。ただ、来季は全日本JSB1000に加えて鈴鹿8耐でもタイヤが17インチホイールのものに統一されるので、17インチを基本に開発したホンダCBR1000RR SP2の熟成がどこまで進むかに期待がかかる。

そんな折、ホンダは来季の全日本JSB1000、鈴鹿8耐にいよいよファクトリーチーム「Team HRC」を参戦させることを発表。ヤマハファクトリーに対し、真っ向勝負を挑んでいくことになった。「Team HRC」からの参戦ライダーは今季のJSB1000クラス王者の高橋巧。彼が軸になってCBR1000RR SP2を開発し、ヤマハの三連覇を許した鈴鹿8耐の王座奪還を狙う。ついにホンダが本気モードになった。

ホンダファクトリー「Team HRC」の全日本JSB1000への参戦は写真の2008年以来10年ぶり【写真:本田技研工業】
ホンダファクトリー「Team HRC」の全日本JSB1000への参戦は写真の2008年以来10年ぶり【写真:本田技研工業】

このシーズンオフにどこまでCBRのポテンシャルを上げることができるかにもかかってくるが、メーカー直属のファクトリーチーム参戦で期待してしまうのは現役のMotoGPライダーたちの参戦だ。ここ数年、ケーシー・ストーナー、ニッキー・ヘイデン、ジャック・ミラーといった元王者やMotoGPライダーを起用してきたが、3年連続で負けてしまっている。今季までファクトリーマシンを託された「MuSaShi RT HARC PRO」は新人の水野涼を起用することが決まっているため、「Team HRC」で勝利するために誰が乗ることになるのか注目が集まる。ホンダの逆襲の秘策は何なのだろうか。

選考理由まとめ

・ホンダがロード、トライアル、モトクロスで全日本三冠

・全日本ロードレースでは4カテゴリー中3階級で王者に

・高橋巧を擁して2018年ぶりにファクトリーチームが復活

3位:鈴鹿8耐が40回記念大会。ヤマハ三連覇!

2017年は国内ロードレースが目に見える活況となった1年だった。その最大の要因は「鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)」が40回目の節目となり、各メーカーが記念大会制覇に向けて力を注いだことだろう。今年からFIM世界耐久選手権(EWC)が「鈴鹿8耐」をシリーズ最終戦に設定。耐久のワールドチャンピオン決定の舞台となり、全世界に向けてそのニュースが配信されることも鈴鹿8耐が盛り上がった一因である。

鈴鹿8耐の会場内には東南アジア各国から招待されたバイク関係者の姿が見られた。2輪の国内マーケットが停滞する中で、オートバイメーカーとして力を注いでいるのはアジアのマーケット。その中で夏の祭典でもある「鈴鹿8耐」は対アジアという意味でも非常に重要な意味を持つ1戦になりつつある。負けられない1戦であり、だからこそのホンダファクトリー復活の流れも起こったといえよう。

コンサート会場のような美しい光に包まれた鈴鹿8耐のグランドスタンド【写真:MOBILITYLAND】
コンサート会場のような美しい光に包まれた鈴鹿8耐のグランドスタンド【写真:MOBILITYLAND】

2017年の鈴鹿8耐は現役MotoGPライダーの参戦はジャック・ミラー(ホンダ)のみとなり、この数年ではややパンチに欠けるエントリーとなったが、それでも見どころの多い大会に。そんな中でやはり強さを見せたのはヤマハ。今季はエースの中須賀克行を軸に、WSBKに参戦するアレックス・ロウズ、マイケル・ファンデル・マークというヤマハYZF-R1のライダーで固めてきた。タイヤもこの大会まで使用可能だった16.5インチを選択し、これまでのデータを活かしながら三連覇を狙った。

ファン・デル・マーク、中須賀、ロウズのYZF-R1トリオで三連覇に挑んだ。
ファン・デル・マーク、中須賀、ロウズのYZF-R1トリオで三連覇に挑んだ。

全日本では17インチの新タイヤに苦戦していた中須賀も使い慣れた16.5インチで好走。予選でもポールポジションを獲得し、完璧なレース運びでトップを磐石のものに。暴れん坊のロウズが一番の心配のタネと言えたが、3人のライダーがチームワークを重視し、完璧に任務を遂行。全くのノーミスを貫き、ライバルを全車周回遅れにする勢い(同一周回はKawasaki Team GREENのみ、2分9秒差)でヤマハ史上初の鈴鹿8耐・三連覇を成し遂げた。

まさにヤマハファクトリーの凄みを見せつけられたレースだった。ライダーたちの素晴らしい走り、完璧な作業、高い信頼性。今年はメカニックも若返りを図った中で卓越したマネージメント能力には心から驚かされた。まさに40回記念大会に相応しいウイナーだったと感じる。

選考理由まとめ

・40回記念大会で多くの関心が集まった

・ヤマハが非の打ち所がないレースで優勝

・中須賀克行がポールポジション獲得

2位:中上貴晶が来季からMotoGPに昇格決定

2017年、大いに盛り上がったMotoGPだが、来年以降さらに国内での人気に火がつきそうなポジティブなニュースがもたらされた。Moto2クラス(600cc)に参戦中の中上貴晶の最高峰「MotoGP」クラスへのステップアップである。中上は来季「LCR Honda Idemitsu」からホンダRC213Vを駆り参戦する。

2018年からMotoGPクラスに参戦する中上貴晶【写真:本田技研工業】
2018年からMotoGPクラスに参戦する中上貴晶【写真:本田技研工業】

4年ぶりに最高峰クラスに日本人ライダーが帰ってくる。これまでもワイルドカード(スポット参戦)のライダーは存在したが、レギュラー参戦は2014年の青山博一以来だ。MotoGPクラスでは宇川徹、玉田誠が優勝を飾り、中野真矢が3位表彰台の経験を持つが、日本人が最高峰クラスで優勝を争った時代から既に14年の月日が流れてしまっている。そんな中、Moto2クラスでも優勝を飾った中上の参戦は来年、大いに注目を集めることになるだろう。

中上は全日本ロードレース125ccクラスで年間王者になった後、2008年と2009年と世界選手権125ccに参戦。しかし、最高位は5位止まりで失意のまま帰国する。軽量級クラスから600ccの中量級に転向し、全日本ロードレース選手権に参戦。2011年にJ-GP2(600cc)のシリーズチャンピオンを獲得したのち、2012年からMoto2クラスで世界復帰。ティーンエージャーの頃から世界で活躍し、日本に戻り、そして世界の桧舞台にまた舞い戻った苦労人でもある。

毎年、Moto2で優勝争いをしながらもMotoGPへのステップアップは叶わず6シーズンもMoto2で過ごすことになってしまったが、いよいよ来年は夢の最高峰の舞台に挑む。2017年序盤は優勝争いを何度も展開しながらあと一歩のところで優勝できず。夏の鈴鹿8耐参戦でも転倒してしまい、夏までの流れは決して良くなかった。しかし、8月末のイギリスGPで今季初優勝を飾り、秋の日本GPでは母国でポールポジションを獲得。2017年はMoto2ランキング7位でシーズンを終えている。

MotoGPクラスには今季もMoto2でトップ争いを展開したライバルのフランコ・モルビデリ(今季王者)、トーマス・ルティ(今季2位)も同じくホンダのチームでMotoGPに昇格する。チームメイトにはファクトリー契約するベテランのカル・クラッチローが居るのは心強いが、Moto2の同窓生に負けるわけにはいかない。中上はシーズン終了後、ライディング中の腕上がり症状を防止するためにスペインで手術を実施。初年度から攻めの走りをするために準備を行った。いよいよ勝負の時が来た25歳。来季はMotoGPの中上から目が離せない。

動画:中上貴晶が出演したホンダのCM「Me and Honda」

選考理由まとめ

・4年ぶりに日本人MotoGPライダー誕生

・苦労人の中上がついに最高峰クラスに昇格

・冬に腕上がり手術を実施し、最高峰に挑む

1位:ニッキー・ヘイデン交通事故で死去

2017年の2輪モータースポーツの1位は残念ながら悲しいニュースだ。今年5月、「スーパーバイク世界世界選手権(WSBK)」に参戦中のニッキー・ヘイデンがイタリアで自転車トレーニングの最中に交通事故に遭遇し、5月22日に死去した。享年35歳。

交通事故により死去したニッキー・ヘイデン
交通事故により死去したニッキー・ヘイデン

2000年代のMotoGPの大スター、ニッキー・ヘイデンの交通事故死はあまりに悲しく衝撃的だった。ヘイデンはアメリカのAMAスーパーバイク選手権で才能が高く評価され、4ストローク化した最高峰MotoGPでホンダのエースとして活躍。バレンティーノ・ロッシとのライバル関係はドキュメンタリー映画にもなった。2006年にMotoGPで初のワールドチャンピオンに。2009年からドゥカティに移籍したが、2014年から再びホンダに戻り、ベテランライダーとして活躍。2016年からは舞台を「スーパーバイク世界選手権(WSBK)」へと移し、雨のセパンサーキットではセンセーショナルなスーパーバイク初優勝も飾った。

また、2016年は「鈴鹿8耐」に参戦。結果は転倒リタイアに終わり、2017年はそのリベンジが期待されていた。ニッキー・ヘイデンは鈴鹿8耐で来日した時も常にファンサービスを怠らなかった。甘いマスクで女性に人気だっただけでなく、男性ファンからもその気さくな人柄と力強い走りで多くのファンを持つライダーだった。今季はレッドブルをスポンサーにWSBKのホンダチームが体制をリニューアルして躍進が期待されたが、新型マシンの開発が思うように進まず苦戦。これからという時にヘイデンは天に召された。

ワールドチャンピオン1回、MotoGP優勝3回、WSBK優勝1回。数だけを追えばロッシやマルケスには及ばないが、バイクを愛し、ファンを愛した偉大なライダーだった。「ケンタッキー・キッド」「ゼッケン69番」今後もニッキー・ヘイデンのことを忘れることはないだろう。

東京・青山のホンダウェルカムプラザではファンに向けたニッキー・ヘイデンの追悼展示が行われた。
東京・青山のホンダウェルカムプラザではファンに向けたニッキー・ヘイデンの追悼展示が行われた。

選択理由まとめ

・2000年代のMotoGPスターの突然の交通事故死

・世界中のファンが#GoNicky のハッシュタグで彼の回復を祈った

・ファンを大切にしたチャンピオンに哀悼の意を表する

他にも「ロッシ、怪我からの奇跡的な復帰」や「ルーキー、ヨハン・ザルコの活躍」など特にMotoGP関連ではトップ10にあげたい話題が多かった2017年。2輪レースの面白さは人間がコース上で見てわかる格闘を展開することだと思う。2018年もさらにライダー&チームがワクワクさせてくれるニュースをピックアップできる1年になることを祈りながら、新しいシーズンを迎えたい。

モータースポーツを愛する皆様、よいお年をお迎えください。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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