【2輪モータースポーツ】2017年の10大ニュース(10位~6位)

4月、初挑戦のル・マン24時間で好走した野左根航汰

Yahoo!ニュースオーサーとして選ぶモータースポーツの「2017年の10大ニュース」。前回は2つの記事に渡って4輪モータースポーツの大きなニュースを10個選んだが、今回からは「2輪モータースポーツ編」。まずは10位から6位を紹介する。

10位:KTMがMotoGPにフル参戦

2017年はロードレース世界選手権の最高峰「MotoGP」クラスに新たなバイクメーカーがフル参戦した。オーストリアのバイクメーカー「KTM」である。

KTMの参戦でMotoGPのマニュファクチャーラー(バイクメーカー)はホンダ、ヤマハ、スズキ、ドゥカティ、アプリリアに加えて全6メーカーに増加。2011年でスズキが一時参戦を休止した後、バイクメーカーの参戦がホンダ、ヤマハ、ドゥカティの3つだけになり、小規模なコンストラクター(車体製造メーカー)の参戦に頼らざるを得ない時代があったが、僅か5年でマニュファクチャラーを呼び戻すことに成功した。

KTMのMotoGPマシン RC16
KTMのMotoGPマシン RC16

その要因の一つが最高峰MotoGPマシン開発の要でもあった電子制御ECU(エンジンコントロールユニット)を2016年に完全に共通化したこと。メーカー間で差が大きく開き、長く参戦を続けているメーカーが優位な状況にメスを入れたことで、スズキ、アプリリア、KTMが参入することになった。

モトクロスやラリーなどでオフロードを得意とした「KTM」がロードレースに進出したのは2000年代前半。2ストロークの125ccクラス、250ccクラスに参戦し、2005年に125ccで初のマニュファクチャラーズ王者に。そして、4ストローク250ccのMoto3クラスが設立されてからは2012年から同クラスで4度のマニュファクチャラーズタイトルを獲得している。Moto3に加えてMoto2にもコンストラクターで参戦。そしてついに最高峰MotoGPへのフル参戦した。

KTMのMotoGPマシン「RC16」は昨年の最終戦でデビュー。KTMのアイコンとも言える鋼管トラリスフレームを使用したMotoGPマシンだ。参戦初年度ということもあり、手探り感は否めない1年だった。それでも新規参戦メーカーの優遇措置を活かして開発を進め、後半戦はポル・エスパルガロがシングルフィニッシュ(9位)を2回獲得。マニュファクチャラーズランキングではアプリリアを上回ってシリーズ5位でファーストシーズンを終えた。来季以降はさらなるポテンシャル向上が期待され、既存メーカーにとって侮れない存在になっていくだろう。

選考理由まとめ

・KTMの最高峰クラス参戦

・新規参入メーカーの増加でMotoGPが活性化

・マシンは特異なトラス構造のフレーム

9位:複数の日本人ライダーがWSSに参戦

2017年は多くの日本人ライダーが海外へと戦いの場を求めた1年だった。過去にはもっと多くの選手が海外で戦っていた時代があったが、好景気も後押ししてか若手ライダーを中心にグローバルに活躍する選手が増えつつある。

ロードレース世界選手権のMoto2クラス(600cc)には中上貴晶に加え、昨年までCEVレプソル(旧スペイン選手権)を戦っていた長島哲太がフル参戦。Moto3クラス(250cc)には鈴木竜生、鳥羽海渡、佐々木歩夢がフル参戦した。近年はバイクメーカーの後ろ盾を持たない選手が世界選手権にチャレンジすることも多い。2輪モータースポーツに対して理解あるスポンサーの支援を受け、彼らはレースの本場、ヨーロッパの関係者たちと交渉を行いグローバルに活躍している。

そんな日本人選手の受け皿として注目されたのが「スーパーバイク世界選手権」に併催で開催される「スーパースポーツ世界選手権(WSS)」。600ccの市販車ベース車で争う同選手権に今年は大久保光、渡辺一樹、國川浩道らが年間参戦した。渡辺一樹は昨年までカワサキの全日本トップチーム「Kawasaki Team GREEN」でJSB1000を戦っていたが、世界への夢を捨て切れず、自ら安定を捨てて世界選手権に乗り込んだ。2年目の大久保光はシーズンを通じては厳しい結果になったものの、関係者の注目を集める走りを展開し、来季は同選手権のカワサキ系トップチーム「Kawasaki Puccetti Racing Team」のシートを掴んだ。

今季WSSとル・マン24時間をホンダのバイクで戦った大久保光。来季はカワサキのWSSトップチームへと移籍する。
今季WSSとル・マン24時間をホンダのバイクで戦った大久保光。来季はカワサキのWSSトップチームへと移籍する。

彼らには常駐で帯同するマネージャーはおらず、交渉ごとも自分たちの仕事。レース環境としては厳しいものがあるため好成績を掴めなかったが、2輪レースは腕一本でチームの信頼を得られる要素が多いのでチャレンジする価値はあったのではないかと思う。渡辺一樹は残念ながら来季のWSS挑戦を断念したことを発表。その去就が注目される。今後も先輩たちが築いた布石を参考にチャンスあらば挑戦する若手選手が現れるのではないだろうか。

選考理由まとめ

・WSSに多くの日本人ライダーが挑戦

・メーカーの支援に頼らずに参戦する選手が増加

・来季は大久保光がカワサキ系トップチームから参戦

8位:モリワキが鈴鹿8耐に復帰参戦

2017年の国内ロードレースで大きな話題を提供してくれたのは、やはり「モリワキレーシング」だろう。今年は高橋裕紀、清成龍一のトップライダー2人を起用して全日本ロードレース選手権JSB1000クラスに参戦。そして鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)に9年ぶりに復帰した。

鈴鹿8耐に参戦したMORIWAKI MOTUL RACING 【写真:MOBILITYLAND】
鈴鹿8耐に参戦したMORIWAKI MOTUL RACING 【写真:MOBILITYLAND】

三重県・鈴鹿市の名門チーム「モリワキ」の復帰は40回目の記念大会を迎えた鈴鹿8耐の目玉だった。とはいえ、9年間のブランクはそう簡単に埋められるものではなく苦戦。自社の予算でオリジナルのスイングアームを複数製造して意欲的な姿勢を見せるも、新車ホンダCBR1000RR SP2のデリバリーが開幕直前になったことが大きくリズムを崩した。

新規チームに参加が義務付けられる8耐出場枠をかけた選考会「8耐トライアウト」の対象レースで結果を残せず、地方選手権の鈴鹿サンデーロードレースの最終選考にまで参加を余儀なくされ、出場が正式に決まるまでファンをやきもきさせたのも記憶に新しい。参戦までのプロセスが困難に満ちていただけに、公式合同テストでは総合トップタイムを叩き出した時は名門モリワキがさらに鈴鹿8耐でドラマティックな結果を残すのでは?と期待も高かったが、決勝レースでは清成が61周目に転倒を喫し、上位進出のチャンスを失った。修復して27位で完走を果たすが、名門モリワキの復帰初年度は厳しい結果となった。

しかしながら、今季のモリワキは全日本JSB1000で8耐後に目覚ましい進化を遂げた。岡山国際サーキットのレースではヤマハファクトリーに続く3位でフィニッシュ。イタリアのピレリタイヤを使用した今季、一つのポジティブな結果を持ち帰った。国内でタイヤ開発が盛んに行われているわけではない外国メーカーとの共闘。その中でこの結果は特筆に値するものであり、必ずや来年につながるはずだ。「モリワキ」は早々と来季の高橋、清成のコンビ継続を発表。時が経つごとに結束力を固めるチームが来年にかける思いはファンをさらにワクワクさせてくれそうだ。

選考理由まとめ

・9年ぶりの鈴鹿8耐復帰

・出場決定までのプロセスで苦労した

・全日本JSB1000で来年につながる表彰台獲得

7位:野左根航汰がルマンで表彰台に

2017年、ヤマハのファクトリーライダーとなるや大活躍だった野左根航汰(のざね・こうた)
2017年、ヤマハのファクトリーライダーとなるや大活躍だった野左根航汰(のざね・こうた)

2輪レースファンはワクワクさせてくれる若手ライダーをいつも待ち望み、全力で応援する。そんなワクワクさせてくれる走りを2017年に展開したのが今季、FIM世界耐久選手権(EWC)と全日本ロードーレースJSB1000に参戦した野左根航汰だ。

今季の野左根はJSB1000での走りが評価され、中須賀克行と同じ「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」所属となり、ヤマハのファクトリーライダーになった。同時にFIM世界耐久選手権にもオーストリアの「YART」から参戦。今年4月にはル・マンで初めての24時間耐久レースに挑んだ。

レースウィークが始まるまで、フランスの観客の多くがその存在を知らなかったであろう当時21歳のライダーがル・マンで大きな注目を浴びることになった。彼の独特なライディングスタイルに熱い視線が向けられたのだ。耐久レースの乗り方とはとても思えない深いバンク角のライディングをしていたのは、コース上ではただ一人だけ。あのライダーは何者だとル・マンの話題を独占する走りを披露する。

未経験の24時間レースに体力的にも苦しんだ部分もあった。しかし、レース中には明らかにペースが勝るライバル「GMT94 YAMAHA」のマイク・ディメッリオ(元MotoGPライダー)に抜かれるもすぐにクロスラインで抜き返すなど、ファイターらしい攻めの走りで朝方のル・マンを大いに盛り上げた。ディメッリオにオーバーテイクされ、これがレースの勝負を決める順位入れ替えとなり悔しさが残る戦いとなったが、現地のファンやメディアは野左根の走りを賞賛。目の肥えた耐久レースファンに強烈な印象を残した。

野左根はル・マン24時間レース初挑戦で2位表彰台を獲得した。
野左根はル・マン24時間レース初挑戦で2位表彰台を獲得した。

その後、野左根は全日本JSB1000でも2勝をマーク。最終戦・鈴鹿では中須賀と遜色のない2分5秒台の好タイムをマークするなど実力を見せつける。さらにMotoGP日本グランプリには代役で急遽参戦し、初回のフリー走行から高い順応性を披露。予選での転倒で怪我をしてしまい、決勝での活躍はならなかったが、レースウィークの話題やファンの期待を独占するパフォーマンスは彼の師匠、ノリックこと阿部典史を彷彿とさせる存在感だ。経験を積んだ野左根が来季、どんな結果を残すのか、ファンの期待はさらに高まるだろう。

選考理由まとめ

・初のル・マン24時間で2位表彰台

・全日本JSB1000で2度の優勝

・MotoGP代役参戦でも物怖じしない攻めの走り

6位:マルケスが4度目のMotoGP王者に

2017年のロードレース世界選手権「MotoGP」クラスは数あるモータースポーツシリーズの中で最も面白く、多くの関心を呼んだレースだったのではないだろうか。KTMの参戦で6メーカーに増えた華やかさもあるが、今季のMotoGPにはヤマハにマーヴェリック・ビニャーレスが移籍して開幕2連勝、ヤマハTech3からMotoGPにデビューしたヨハン・ザルコがいきなりトップ争いを展開、ホルヘ・ロレンソが移籍したドゥカティがアンドレア・ドビチオーゾの活躍で躍進するなど本当に役者が揃い、興味深い要素が多いシーズンだった。

マルク・マルケス
マルク・マルケス

そんな中、タイトル争いは最終戦バレンシアGPまでもつれた。混戦のシーズンの中、夏場に勝利を重ねたマルク・マルケス(ホンダ)と雨の中の日本グランプリを制したアンドレア・ドビチオーゾ(ドゥカティ)の一騎打ちに。ただ、24歳ながらすでに3度もワールドチャンピオンを獲得しているマルケスは強かった。地元スペインの観客の前でポールポジションを獲得し、ドビチオーゾに強烈なプレッシャーを与えることに成功。しかし、決勝レースで攻めの走りを見せる中、マルケスはコースアウトしてドビチオーゾの先行を許す。そして、その直後にドビチオーゾが転倒。マルク・マルケスは走りきり3位表彰台を獲得して、2年連続4度目のチャンピオンを決めた。

一騎打ちの最終戦レースがチャンピオン候補者のドッグファイトで展開され、両者がミスをする。まさに今季のMotoGPの激しい戦いを物語るレースとなり、ファンはまたもやその心を鷲掴みにされた。歴史に残る名シーズンに勝利したマルク・マルケスの素晴らしいチャンピオン獲得劇だった。

選考理由まとめ

・大激戦のシーズンを象徴するタイトル争い

・群雄割拠なMotoGPライダーたちの活躍で人気上昇

・最終戦までもつれたタイトル争いでマルケス王座獲得

次回の記事では5位から1位までを紹介します。

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