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愛子さまの大学生活は? 陛下が大学のゼミ旅行で見せたお茶目な一面

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
学習院大学の研修旅行にて 右が陛下、左が乃万さん(写真提供・乃万暢敏さん)

 ご成年を迎えられた記者会見で、親しみやすさの中にも聡明さが印象的だった、天皇陛下の長女・敬宮愛子さま。心を込めて語られるそのお姿に、陛下譲りの生真面目な人間性と、皇族としての責任を自覚された真摯な姿勢に、心を動かされた人は多いことだろう。 

 学習院初等科から大学院まで陛下とご一緒だった、ご学友の乃万暢敏(のま のぶとし)さんは、陛下と愛子さまはとても似ていらっしゃると語る。

「陛下のお側で深い薫陶を受けてこられたので、何事にも誠実であろうとされるところが、とてもよく似ているように思います」

 愛子さまはコロナ禍のためオンライン授業を続けており、今月、学習院大学3年生になられた。

 果たして約40年前の陛下の大学時代は、どんなご様子だったのだろうか。乃万さんに、青春の思い出が詰まったエピソードを伺った。

■陛下がスーツケースに乗って「カギが閉まらないんだよ」

 当時から陛下はいつもニコニコとして、冗談をおっしゃっては皆を和ませたり、人が言ったジョークにも心の底から面白いという顔で反応なさり、やんごとないお立場でいらっしゃることを忘れさせるほど気さくで、その場に溶けこむのが上手であったという。

 陛下と乃万さんは、学習院大学史学科で「日本中世史」を研究するゼミに入られていた。そのゼミでは、現在放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の史料となっている、国史大系本のひとつ「吾妻鏡」の輪読を行っていた。

 特に夏季休暇中には箱根の旅館に1週間ほど逗留し、班ごとに文献の意味や下調べをして発表するのだが、大変厳しいゼミだったという。事前の下調べや解釈が充分でないと、先生や先輩から鋭く追求され、中には涙ぐむ女子もいたとか。

 ゼミの学生にとっては、この合宿で歴史への理解を深めることが目的であったことから、専門の書籍や分厚い辞書などもあって、大きなスーツケースが必要なほど大荷物を抱えて参加する学生が多かった。それに加えて、滞在先では各班から配られる資料などが多く、荷物は増える一方。

 そんな合宿も終盤にさしかかり、いよいよ帰京するという朝、陛下が宿泊されている部屋からドタバタと音が聞こえてきたという。何だろうと思い、乃万さんが部屋へ入ると、陛下がスーツケースの上で幾度もジャンプをなさっていたのだ。

「どうされました?」

「いや、あの……カギが閉まらないんだよ」

 荷物が増えていたのか、スーツケースがしっかりと閉じないので、陛下は力づくで閉めようとされていたのだった。何か大きなお土産でも買われたのかと、乃万さんがスーツケースの中を見ると、お土産の類は見当たらず、着替えの洋服がくしゃくしゃに放りこまれてあった。

 山盛りに積んであるだけでは、かさばるばかりで、閉まるわけがない。そこで乃万さんが衣類などをたたんで入れ直すと、キレイに収まり、スムーズにカギを閉めることができた。

 陛下は感心しながら、「ありがとう。一つ勉強になりました」とおっしゃり、予定通りに出発することができたという。

「普通の人ならば、どこかバツが悪そうな顔をして、『やろうと思えばできたんだ』などと強がりのひとつも言うようなものですが、陛下はあまり人に見られたくない場面でも、心から『ありがとう』と必ずお礼をおっしゃいます。人としての礼儀と相手への感謝を忘れない謙虚な方です」

 と、乃万さんは話す。

 実は、この話には後日談がある。

 陛下がオックスフォード大学に留学され、一時帰国する際、乃万さんは「お土産に何がいいですか」と聞かれたという。

 何気ない会話の中で、イギリスにあるソルト&ビネガーのポテトチップスをあげたところ、本当に買ってきてくださった。

 帰国した陛下から「乃万くんが好きだから、これをお土産に」と渡されたのは、イギリスでわざわざお買い求めになった、ソルト&ビネガーのポテトチップス3袋。しかし、例のように、スーツケースの中にギュウギュウで詰め込まれていたのか、ポテトチップスは粉々に砕けていた。

 そんなことより、乃万さんは陛下の友達を大切にされるお気持ちが胸にしみ、粉々のソルト&ビネガーのポテトチップスは、格別のおいしさであったという。

■一番楽しかった大学時代

 人は誰しも、自らの人生を振り返って一番楽しかったと思う時期があるものだが、ある時、乃万さんは陛下にこんな質問を投げかけた。

「学習院初等科、中等科、高等科、大学と来て、どの時代が一番楽しかったですか?やっぱり大学時代ですか?」

 その質問に、陛下はまじまじと乃万さんの顔をご覧になって、こう答えられた。

「乃万くんも、そうでしょ」

 陛下のお言葉に、乃万さんも「そうですね」と頷き、2人とも同じ意見であったという。

 陛下は今年のお誕生日に際しての記者会見で、自身の大学生活を振り返り、このように話された。

「大学では様々な人たちと顔を合わせて授業を受けたり、放課後の部活動で一緒に参加したり、見ず知らずの人と学生食堂で隣り合ったり、新しい発見と経験の連続であったように思います。

そういう意味でも、愛子には、感染症が落ち着いて、いつの日かキャンパスに足を運べるようになると良いなとは思いますが、たとえどのような環境にあっても、実り多い学生生活を送ることができればと願っています」

 陛下にとって大学時代は、幅広い情報に触れ、いろんな人たちと出会い、多岐に渡って経験を積むことができる、開放感に満たされた日々であったようだ。

 陛下と乃万さんは、学生時代から途切れることのない交流を続け、気の置けない友人同士でもある。

「私が窮地に立った時がありました。そんな時、本当は逆であるはずなのですが、陛下が盾になって守ってくださいました。陛下は人のために何ができるのかを常にお考えになって、自分ができることだったら、全力をあげてそれをなさる方だと思います」

 と、乃万さんは話す。

 いずれコロナ禍が落ち着いたら、愛子さまも学習院大学のキャンパスに通われ、さまざまな人たちと出会いを重ね、生涯の友となる仲間が増えていくことだろう。

「雅子さまとご結婚してから陛下はオシャレに ご学友が明かす陛下のファッションの変遷」

https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20220412-00290412

「陛下『オンラインは良い使い道を考えていこうと思います』ご学友に明かした令和皇室の新しい可能性」

https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20220413-00290415

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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