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愛子さまへの教育と覚悟の現れ? 5年前に起きた天皇ご一家の那須静養での変化

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
雅子さまと愛子さま(写真:ロイター/アフロ)

 12月5日、天皇皇后両陛下の一人娘、敬宮愛子さまが皇居で成年の行事にのぞまれた。

 格式の高い正装であるローブデコルテ姿で、皇居宮殿の車寄せにお出ましになった際、愛子さまを包んでいたのは、なんとも華やかな雰囲気だった。一歩、二歩と歩みを進めると、愛子さまはふと足元の何かを確認し、立ち止まってからカメラのほうに向かれた。

 筆者はテレビ番組の仕事をしているので、足元の確認が何を意味しているか、すぐにわかった。それは事前に愛子さまが立たれる位置が決められていて、きちんとそこに少しの狂いもなく立とうとされたのである。

 そのご様子は、真面目で責任感の強いご性格を表しているようで微笑ましかった。愛子さまのお姿は画面の中に綺麗におさまり、ハッと思わせるほどの気品を放っていたように思う。

■愛子さま20年間の映像が捉えていたもの

 筆者は愛子さまご誕生以来テレビの皇室番組に携わり、ご成長につれて変化していく表情やご様子などをずっと見つめ続けてきたのだが、改めて膨大な映像を見直してみると、あることに気づいた。

 それは、天皇ご一家の毎年夏の恒例となっている、那須で静養された時の映像にあった。赤ちゃんの時からお手ふりを披露され、沿道に集まった人たちからは、「愛子さまカワイイ!」という声が飛び交っていた。

 しかし、自我の芽生えとともに、次第にはにかむ仕草をお見せになっていく。子どもの気持ちになって考えると、知らない人たちから「愛子さま!」と自分の名前を呼ばれるのだから、戸惑うのも無理はないだろう。

 那須塩原駅前での天皇ご一家のお出ましは、ご静養の際に毎回行われてきたのだが、これには愛子さまが小さい頃から、多くの人たちの視線を集めることに慣れてほしいという両陛下のお考えがあるように感じられる。

 皇室に生まれたお子様は、周囲から常に見られるお立場である。民間から皇室に嫁がれた雅子さまは、それがいかにストレスを感じることであるかを経験され、わが子には早い段階で、「常に見られる立場」であることを自然に受け入れるようにしたいと思われたのではないだろうか。

■天皇ご一家の行動、5年前に起きた変化

 映像を見ていくと、ある年から天皇ご一家の行動に変化が表われていた。それは、2016年のこと。前年までは、那須塩原駅前にお出ましされると、ご家族3人でお手ふりをされ、そのまま車に乗り込んでいらっしゃったのだが、この年からは違ったのだ。

 笑顔でお手ふりをされたのは例年通りであったが、その後、天皇陛下が雅子さまに何かを話しかけられた。それに雅子さまが頷くと、陛下は沿道にいる人たちの所へ歩き出されたのである。

 ご家族3人で歩みを進め、陛下はお迎えの群衆の中にいた少年2人に声をかけ、雅子さまもその会話に参加されたのである。愛子さまもまた、緊張したご様子で一緒に会話に耳を傾けていた。

 実はこの年、上皇さまが退位の意向を強くにじませた、お気持ちを表明された。これによって、当時皇太子だった陛下は、天皇になられる日が近づき、同時に愛子さまは天皇の娘というお立場になることが既成事実となった。

 那須での行動の変化には、その日に向けて愛子さまに、人びとに声をかけて交流されることを習得してほしいという、両陛下のお考えがあるように思えてならない。

 翌年(2017年)も天皇ご一家は、那須塩原駅前にお出ましされると、すぐに人びとのもとに近づき、声をかけられていた。その時の映像には、次第に人との触れ合いに慣れ、会話に参加するようになられていく、愛子さまのご様子がつぶさに映っている。

 一組目では、愛子さまは緊張しているご様子だったが、二組目ではにこやかに受け答えし、三組目以降は、少し慣れて話をしていらっしゃった。

 この時、愛子さまと話した少年は、「(愛子さまは)思った以上に優しくて安心した。心が落ち着く」と感想を語っていた。このことからも、愛子さまが落ち着いて会話をされていたことが伝わってくる。

 そして、陛下が即位された2019年の夏は、愛子さまが天皇の娘となられて初めての那須ご静養だった。

 この日、陛下は愛子さまをリラックスさせようとしたのか、ハンカチで顔の汗をぬぐいながら一言、「ハンカチ王子」とユーモアたっぷりに話される場面もあって、雅子さまも愛子さまも思わず吹き出してしまったご様子であった。

 こうした陛下の応援もあり、この日、愛子さまは積極的に人びとに声をかけ、和やかに交流された。

■両陛下をお助けしていきたい

 成年を迎え、愛子さまが公務を務めるようになると、訪れた先の人びとに声をかけることが求められる。そのお手本となっているのは、国民に心を尽くして触れ合う、両陛下のなさりようであるのだろう。

 やってみせて、させてみて、身に付けさせていく。那須での映像には、愛子さまのご成長の記録とともに、両陛下の親としての教育がはっきりと現れているのだ。

 愛子さまは成年に当たってのご感想で「これからは成年皇族の一員として、一つ一つのお務めに真摯に向き合い、できる限り両陛下をお助けしていきたいと考えております」と綴られた。その思いは、愛子さまが公務に取り組まれる中で、形となっていくに違いない。

「愛子さまは新調をお見送りに… 「皇室のティアラ」始まりや所有者など裏話5選」https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20211209-00271450

「”まるで愛子さまの妹” 愛犬・由莉がもたらした影響は? セラピー犬として活躍も」https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20211213-00271605

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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