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「まるで愛子さまの妹」愛犬・由莉がもたらした影響は? セラピー犬として活躍も

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇ご一家と由莉(アフロ)

 今年、愛子さま20歳のお誕生日に際して公開された映像には、去年に続いて愛犬・由莉とともに仲良く小径を歩くご様子が紹介されていた。

愛子さまと由莉はいつも一緒。愛子さまがいらっしゃるところ、常に由莉もぴったり寄り添って微笑ましい姿を見せている。一人っ子の愛子さまにとって、由莉は妹のような存在なのだろう。

2年前、天皇ご一家が那須御用邸で過ごされた映像には、陛下が「おすわり」とおっしゃると、由莉がすぐにその場に腰を下ろす場面が映っていた。普段から愛情を注がれ、きちんと躾をされていることが伝わって来る映像であった。

愛犬・由莉は天皇ご一家にとって、大切な家族の一員なのだ。

■「由莉」の名前にこめられた思い

 愛子さまがお生まれになった時、両陛下はピッピとまりというワンちゃんを飼われていたが、この2頭は赤坂御用地に迷いこんだ犬が産んだ、10頭の子犬のうちの2頭。他の8頭は宮内庁職員らで引き取ったという。

 しかし、可愛がっていたピッピとまりは、2009年にどちらも天国へ召されてしまった。

 邪心の無い愛らしいまなざしを向けて、両陛下に懐いていたワンちゃんが相次いで亡くなったことから、愛子さまも含めご一家は淋しさを覚えていらっしゃったのだろう。同じ年、懇意にしている動物病院から、生後2カ月の日本犬のミックス犬を引き取られた。

 飼い主に捨てられたり、高齢で飼えなくなったりして、行き場を失っていた保護犬だった。

 当時7歳だった愛子さまは、一目でこのワンちゃんが気に入り、難しい漢字を用いて「由莉」と名付けられた。

 「莉」は、日本語でジャスミンの花を表す「茉莉花(まつりか)」の真ん中の一文字なので、おそらくジャスミンの花をイメージされたのではないだろうか。

 ジャスミンは可憐な白い花を咲かせる。愛子さまのおしるし「ゴヨウツツジ」も白い花を咲かせ、見た目にもそっくりだ。

 これは筆者の想像だが、愛子さまのおしるしのゴヨウツツジと似ている、ジャスミンの花にちなんで、仲の良い姉妹のような関係を築いてほしいとの願いがこめられているのではないか。

 「由」は「由縁」や「基づく」という意味があり、「由莉」はジャスミンの花由縁の名前という意味にも解釈できる。

 その名前に表れているように、愛子さまは由莉を大切に育ててこられた。まだ子犬の時は、愛子さまに抱かれて一緒に新幹線に乗り、那須のご静養にも出かけた。那須塩原駅から由莉を重そうに抱いてお出ましになった、愛子さまのお姿を覚えている人も多いだろう。

 やがて由莉が成長し、大きくなってからは、新幹線で移動する天皇ご一家とは別に、車で運ぶようになったという。

■由莉がもたらした社会への影響

 天皇ご一家が保護犬の由莉を飼っていらっしゃることが報じられると、社会を変えるほどの影響が生まれていった。ペットを飼おうとした場合、行き場を失ってしまった保護犬や保護猫を手元に引き取るという選択肢もあるということが、広く知られていったのだ。

 環境省のデータによれば、天皇ご一家が由莉を飼い始めた2009年(平成21年)は、元の飼い主を説得して再び飼うようになったケースや新しい飼い主に譲渡された犬猫の割合は16.0%に過ぎなかったが、その後、急カーブで上昇していき、2019年(令和元年)は61.8%となった。

 現在では半分以上の保護犬・保護猫が、家族の一員として迎えられているのだ。

 天皇ご一家が保護した犬や猫を飼っていらっしゃることで、世の中に理解が広がる一つのきっかけになったのではないだろうか。

 実は筆者も由莉が保護犬だと知ったことで、飼い主のいない犬を引き取り、現在も大切に育てている。保護された動物への取り組みは、ますます拡大していきそうだ。

 2019年、両陛下は全国豊かな海づくり大会に出席するため、秋田県を訪れた時、県の動物愛護センターを視察し、保護犬たちと触れ合われた。両陛下はこの訪問の感想として「殺処分される動物が少しでも減ることを心から願っています」とお言葉を出された。

 保護犬の由莉を迎えたのは、両陛下のそうした思いもあったのだろう。

■セラピー犬としての活動

 愛子さまが愛情を注がれている由莉も、今や大切な仕事に邁進している。

 実は由莉は、セラピー犬として特別な訓練を受け、定期的に小児病棟を訪れて子どもたちの心を癒す活動を行っているのだ。

 この活動に参加するには、健康状態や性格、衛生面など、厳しい基準をクリアすることが求められる。何より適性が重視され、突然の物音やハプニングにも動じないことが必要条件だが、由莉はその条件を見事にクリアした優秀なセラピー犬となった。

 以前、関係者を取材した際、「由梨は穏やかで鷹揚な性格の優しい子で、子犬の頃から適性があった。育つ段階でさまざまな勉強を行った」と聞いた。確かに、由莉の顔を見ていると、表情も柔和で優しい性格であることが伝わってくる。

 病気のために外に出られない子どもたちが、犬と触れ合っている時間だけは病気のことを忘れて楽しい時間を過ごす。そんな活動を行っているセラピー犬の中に、天皇ご一家の愛犬・由莉も含まれているのは、とても素敵なことだ。

 学習院初等科の卒業記念文集に、愛子さまは「動物たちの大切な命」と題した作文を綴られている。以下は一部を抜粋したものであるが、愛子さまの動物に寄せる優しい気持ちが心を震わせる。

「私が飼っている犬は、病院に入院している子供たちを訪問するボランティア活動に参加し、闘病中の子供たちにもとても喜ばれているそうです。(中略)犬も猫も殺処分されない世の中の実現に向けて、たくさんの人に動物の良さが理解され、人も動物も大切にされるようになることを願っています」

 ともに月日を過ごしてきた、愛子さまと由莉。心を通わせる中で、愛子さまは由莉から多くの大切なものを学んでいらっしゃるようだ。

「愛子さまへの教育と覚悟の現れ? 5年前に起きた天皇ご一家の那須静養での変化」https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20211206-00271006

「愛子さまは新調をお見送りに… 『皇室のティアラ』始まりや所有者など裏話5選」https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20211209-00271450

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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