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「野球殿堂特別表彰」まだ十分でないプロセスの可視化

豊浦彰太郎Baseball Writer
今回は、漫画家の水島新司氏や作家の佐山和夫氏、作曲家の古関裕而氏も候補者に。

2020年の野球殿堂入り候補者47名の名簿が発表された。内訳は、競技者対象のプレーヤー表彰とエキスパート表彰がそれぞれ21名と16名、特別表彰が10名だ。

今回から、特別表彰も競技者表彰同様に事前に候補者が明らかにされたことが目新しい。昨年に続き漫画家の水島新司氏がノミネートされ、あらたに作家の佐山和夫氏や作曲家の古関裕而氏の名前も挙がっていることがニュースになっている。

個人的に興味深かったのは、スポーツ報知に掲載された「野球殿堂候補発表 特別表彰候補初の公表も選考委員の名前を出してみては」という記事だ。

この表彰は14人の有識者による投票で決定するが、密室での選考という印象を持たれないためには、選考者の公表は重要なことだと思う。

実際、アメリカの野球殿堂での日本で言うところの特別表彰に当たる「時代委員会(英語表記はEras Committee )」の選出も、16名という少数による投票だが、委員会の構成員はこの記事に記載されているように公表されている。

しかし、それ以上に大事なことがある。アメリカの場合、だれが委員会のメンバーなのかは、投票日の数日前になってやっと明らかになるということと、メンバーは毎年入れ替わる、ということだ。その理由は、候補者やその支持者達によるロビー活動の排除だ。もちろん、実際にそのようなことが行われたからということではなく、そういう疑義を持たれない仕組みにしておくことが、このような少人数投票においては重要なのだ。

さらに言えば、アメリカの場合、実際に投票をする時代委員会メンバーは候補者のノミネートには関与しない。それはまた別のスクリーニング委員会という組織が担当する。実は、そこまで徹底しても投票には人間関係にもたれた部分が皆無とは言えず、問題になることがある。

日本の場合、昨年水島氏が候補者に入りかつ5票も集めたことが結果発表時に明らかになった。氏の功績を否定するものではないが、いままで漫画家はもちろん文壇にも基本的には門戸を開いていなかったので、唐突感があった。そして、今回佐山氏と小関氏が加わった。要するに、広義においての文筆家も表彰したいということだろうが、だれが選考委員かも含めプロセスが必ずしも可視化されていないので、一部有力者の意向かな?とも勘ぐりたくなる。それは邪推だろうが、そう思われない透明性を予め確保しておくことが必要だろう。

<写真は豊浦彰太郎撮影>

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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