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日々成長する大谷翔平、初のシーズン打者専念で更なる飛躍か

豊浦彰太郎Baseball Writer
復帰戦から豪快なスイングを見せた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

大谷翔平が帰ってきた。復帰初戦となる現地7日のタイガース戦では4打数無安打2三振1四球だったが、これからの打者大谷には大いに期待したい。

例外的なマイナーでのリハビリ出場なし

大谷の復帰に関して、ひとつだけ疑問なことがある。それはマイナーリーグでのリハビリ出場がなく、いきなりメジャーの公式戦でのスタメン出場となったことだ。MLBでは、投手であれ野手であれ故障明けは、実戦形式の練習→マイナーでの実戦、というプロセスを経て復帰となるのが一般的だ。特に今回の大谷の場合は、シーズン開幕後間もなく日程的には十分余裕があっただけに、エンジェルスのビリー・エプラーGM、ブラッド・オースマス監督ら首脳陣の判断が少々不可解ではある。

しかし、それでも今後の大谷は楽しみだ。彼には高い順応力、適応力が備わっているからだ。初戦は「しっかりフルスイングできた」ということ以外には見るべき部分は少なかったが、マイナーでの実戦出場がなかったことを考慮すれば致し方ない。

左投手を苦手としない大谷が打者に専念

昨季も、春のオープン戦では酷評されながらシーズンに入るとしっかり結果を出しており、当初は左打者に苦しみながらも、夏場以降はしっかり克服している。これから、試合数を経るごとにどんどん良くなって行くのではないか。昨日のスポーツニュースでは、「苦手の左投手との対戦」をやたら強調する放送もあった。しかし、対左投手のOPSは、7月末までは.500だったが8月以降は.831だった。したがって、現在の大谷は必ずしも左投手を苦にしていないと考えるべきである。

そしてこれが大事なのだが、これからわれわれは、彼のプロキャリアで初めてシーズンを通じて打者に専念する大谷を見届けることになる。やはり、投打二刀流はそれなりに負担となる部分があったはずだ。週に一回の登板から完全に解放された打者大谷はどれだけ飛躍できるだろうか。また、その結果は登板が可能となる来季以降の起用に大いに影響を与えるだろう。

打線全体へ与える効果

また、大谷の復帰がエンジェルス打線に与える効果も見逃せない。同球団には球界最高のプレーヤーであるマイク・トラウトがいる。現在のメジャーのトレンドに沿って、彼は2番で起用されている。しかし、エンジェルスはトラウトの後を打つ3番に人材を欠いている。大谷の復帰戦前までは、左投手にはからきしのダスティン・ボーア(今季は右投手を含めても打率.169)が16試合、基本的には守備の人である遊撃手のアンデルトン・シモンズが12試合、今季は打率.320と好調もこれまでフル出場の経験がない(この好調さが続く保証がない)ブライアン・グッドウィンが5試合、打率.214&出塁率.295と衰えが著しいアルバート・プーホルスが1試合、というパッチワークだった。トラウトの後に大谷が入ることにより、トラウトが勝負を避けられるケースも激減するだろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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