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「イチロー登場、ロッテ18連敗、統一球、巨人選手賭博・・・」平成プロ野球の◯と× その1

豊浦彰太郎Baseball Writer
2009年WBC連覇を報じる号外を奪い合う人々(写真:YUTAKA/アフロ)

平成も残り数日となった。ここで平成プロ野球界を振り返るが、当たり障りのない「10大ニュース」式ではなく、忖度なしの◯×式で評価する。第1回目は「出来事編」だ。

◯ 日本シリーズで3連敗&4連勝(平成元年)

統計学的には、本来発生率1.6%の3連覇からの4連勝。過去114回のMLBワールドシリーズでは一度もないことも不思議ではない(リーグ・チャンピオンシップ・シリーズでは2004年に1度ある)。それが、昨年までの69回の日本シリーズでは、この逆転劇は3度発生している(昭和61年の西武は、初戦引き分け後3連覇4連勝だが)。平成でもその後29年起きていないが、それでもここまでの通算発生率は4.3%と異常に高い。令和では一度も見届けられないと考えるべき?30年前の椿事を語るに「巨人はロッテより・・・」の発言は枝葉末節でしかない。

◯ イチロー登場(平成6年)

昭和の大衆ヒーローはONと石原裕次郎だったと思う。平成ではイチロー(と芸能界ではだれだ?)であることに異論はないだろう。そのパフォーマンスが傑出していただけでなく、少年にとっての将来の夢を昭和の「プロ野球選手」から「メジャーリーガー」に変えてしまった。また、彼の登場はその後のパ・リーグの地位向上のきっかけにもなった。

◯ 10.8 (平成6年)

当時の長嶋茂雄巨人監督が「国民的行事」としたこの試合、中日と巨人がともに69勝60敗で首位に並び「勝った方が優勝」というドラマチックな舞台設定だった。この年スターダムに登り詰めた地元愛知県出身で中日ファンだったイチローですら、ナゴヤ球場でのこの一戦では一塁側ではチケットが取れなかったという。しかし、ここに挙げたのはそれだけが理由ではない。そういう舞台が生まれる素地があったことが重要なのだ。当時、プロ野球は原則引き分けがなく、延長15回で勝負が決しない場合は再試合だった。そう、引き分けがないからこそ「国民的行事」が生まれたことをわれわれは忘れるべきではない。翌日の10.9には、61勝69敗で並ぶヤクルトと横浜が最下位を賭けて戦っている(ヤクルトが勝利)。

× 脱税スキャンダル(平成9〜10年)

「死と税金は決して逃れられない」はずだが、それを理解していない選手31名が脱税に関与。後に侍ジャパンを率いる小久保裕紀は約2833万円の脱税で懲役1年(執行猶予付き)の判決を受けた。小久保同様に後に名球会入りした宮本慎也も懲役10ケ月(執行猶予付き)。この事件が世間に示したのは、スタークラスでもちゃんとした税理士が付いていないケースが多いこと、野球界では契約金をもらうと恩師や関係者に謝礼という帳簿に記載されないカネを渡す習慣があるということだった。

×だけど◯? ロッテ18連敗 (平成10年)

6月13日から7月8日まで18連敗したが、実は4月は11勝5敗と好スタートを切っていた。結果的にはシーズン最下位だったが、チーム打率1位、チーム防御率2位と戦力は整っていた。野球は奥が深いことを教えてくれたロッテに感謝。

◯ 近鉄・北川 代打満塁逆転サヨナラ優勝決定本塁打、しかもお釣りなし (平成13年)

これだけ長く劇的な修飾語が付く本塁打は世界の野球史上でも(ぼくが知る限り)これだけだ。これに比べれば、1951年のナ・リーグプレーオフ(ジャイアンツ対ドジャース)最終戦でのボビー・トムソンのサヨナラ本塁打(「世界中に響き渡った一発」と呼ばれる)など地味なものだ。北川博敏のこの本塁打は、野球史を語る際にもっと取り上げられて良い。

× 「王さんの記録を守れ!」 (平成13年&14年)

「昭和」にも55本塁打に迫ったケースはあった。昭和60年、阪神のランディ・バースは54本塁打で最終戦を迎えたが、王貞治監督の巨人は徹底的にバースとの勝負を避けた。平成ではまず13年。近鉄のタフィ・ローズが55本に並び残り5試合。だが、残り3試合目での王監督のダイエーは勝負してくれなかった。翌14年、今度は西武のアレックス・カブレラが挑む。やはり5試合を残して55本塁打に到達した。だがダイエー戦では3四死球だった。いずれのケースも王監督が四球攻めを指示した証拠はない。しかし、バッテリーが逃げるのを止めさせることが出来る立場にあったことは事実だ。

◯ 球界再編 (平成16年)

振り返ってみると、合併騒動も、2日間のストライキも、交流戦や地域密着型ビジネスの実現などの野球界発展のための産みの苦しみだった、と言うと、近鉄ファンにはあまりに酷だろうが。

× 一場裏金事件 (平成16年)

「裏金を渡したり受け取ったりするのはケシカラン」のだけれど、裏金で「逆指名」や「希望入団」指名を買えるように制度を捻じ曲げた連中が本当の悪者だ。当の一場靖弘が、プロ入り後楽天でもヤクルトでも活躍できなかったのも残念。

◯?×? 落合監督日本シリーズ完全試合目前での継投 (平成19年)

賛否はあるが、あれで「オレ流」が頂点を迎え「完投美学時代」がホントの意味で終了した。あの場面できっちり抑えた岩瀬仁紀はもっと評価されるべき。山井大介も6年後公式戦でノーヒッター達成でメデタシ。

◯ WBC2連覇 (平成18年&21年)

MLBのMLBによるMLBのための大会というこのイベントの成り立ちには胡散臭い部分も多い。しかし、WBCの存在は日本球界を救ったと言って良いだろう。これがあるから侍ジャパン企画の成功もある。世界大会で盛り上がるサッカーファンへの羨みも少しは解消できた。しかし、日本戦以外は全く関心を示そうとしないメディアとファンには×を。

× 統一球てんやわんや(平成23〜25年)

この問題の第一の×は、「統一球」定義への誤解。メジャー仕様の「国際統一球」ではなく、「NPB12球団統一球」である。次の×は、この統一球採用ですっかり打撃戦が減ると、こっそり反発力を高める調整が行われたこと。本件からの学びは、NPBはウソをつくということ、ちょっとしたさじ加減で本塁打は劇的に減ったり増えたりすること。

賭博騒動(平成27〜28年)

賭博自体問題外なのだが、対象の巨人選手への処罰のみならず球団幹部が引責辞任するのも×。個人事業主のプロ野球選手個人の行為に対し、球団に監督責任があるのか?責任の所在をうやむやにし、幕引きを図る対処だった。また、これに引きずられ巨人での「声出し」に対する金銭授受が報道されたが、その後芋づる式に他球団でも同様の行為が行われていたと報道されたのは、その数年前のホテルレストランでの食材偽装の発表連鎖を思い起こさせた。球界シバエビ事件。

◯ 大谷翔平「投打合わせ技でMVP」 (平成28年)

野球マンガが現実になった。令和を代表するのはこの男か。

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Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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