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「依然荒れダマも新境地?のダルビッシュ」豊浦彰太郎の観戦記@MLB.com

豊浦彰太郎Baseball Writer
ツーシームを多投し、荒ダマながら今季初勝利(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

MLB.comで、カブスのダルビッシュ有の今季初勝利を見届けた。昨年5月以来330日ぶりの勝ち星を得たとはいえ、5.2回で4つも四球を与え、最後は相手打者の太もも内側の急所に近い部分に目一杯ぶつけての降板だった。しかし、ダルビッシュは2019年度版を模索しながら工夫を続けていることはよく分かった。

開幕から大荒れの投球が続くダルビッシュ。特に与四球の多さが目立ち、この日の登板前までの9イニング平均四球数は8.3という悲劇的なものだった。

マーリンズ相手の今回の登板でも、画面から窺い知れる範囲では自信満々という雰囲気は感じられず、テンポも悪かった。

その中で、個人的に印象に残ったのは、ツーシーム・ファストボールを途中から多投したことだ。彼は本来、速球のレパートリーとしては、フォーシームとツーシーム(それとカッター)を持っているが、なぜか今季これまでの登板でツーシームはほぼ投げていなかった。

しかし、そのツーシームは威力十分で、最速は99マイルに達していた。

登板後、スポーツ専門チャンネルESPNのウェブ版に、ダルビッシュのインタビュー動画を見つけた。試合後のクラブハウスでのいわゆる「囲み」だ。現地メディアの質問に対し、流暢な英語で対応しているのだが、最後は98〜99マイルを記録していたことに関して「ストライクを取ることより、とにかく力一杯投げることを心がけた」と答えていた。であれば、荒ダマも納得のうちということなのだろう。また、ツーシームに関しては、「今季初めて投げた」と認めていた。「本来、この球種には自信を持っている」とも。

われわれが見落としてはならないのは、彼は単に乱調なのではないということだ。残念ながら、現時点までその高い期待に応じた結果が出ているとは言い難いが、それはダルビッシュなりに、現在の自分にとっての理想のスタイルを模索する過程での産みの苦しみなのだと思う。

チームの低迷を考慮するとあまり悠長なことは言ってられないのだが、もう少し長い目で彼を見守る必要がありそうだ。

この日のゲームは、マイアミのリトルハバナにほど近いマーリンズ・パークで行われた。マーリンズは、2012年にこの球場が完成する以前から慢性的に不入りだ。過去何度も繰り返された選手の切り売り(最近では、一昨年のオフにMVPのジャンカルロ・スタントンや翌年MVPに輝くクリスチャン・イエリッチ、伸び盛りのマーセル・オズーナの外野レギュラー3名を放出したファイヤセールが記憶に新しい)が大きく影響していることは間違いない。

ジャッキー・ロビンソン・デーとして開催されたこの日のメモリアルゲームも、観客数は9,888人でしかなかった。今季ここまでの主催ゲーム計11試合で、開幕戦と先週土日のフィリーズ戦以外は全て1万人未満だ。

この球場は、90年代以降に建てられた他の多くの球場が軒並み新古典主義デザインである種没個性的であるのに対し、近未来的な外観やラテンテイスト満載のギミックなどで実は中々魅力的なのだが、この不入りは残念極まりない。

昨季までセンターに設置されていたなんとも形容しがたいケッタイな巨大オブジェが、芸術を解さぬ?デレク・ジーターを始めとする現経営陣に場外撤去されたのも嘆かわしい。何かと評判の悪かった前オーナー(ジェフリー・ロリア)色を取り除きたかったのだろうが。あのオブジェは、あまりにも奇妙キテレツな点では、昭和45年大阪万博のシンボルだった「太陽の塔」のアメリカ版だと思っていたのだが・・・

2019年4月15日

カブス 7 ― 2 マーリンズ

於 : マーリンズ・パーク

観客 : 9,888人

試合時間 : 3時間27分

勝利投手 ダルビッシュ有(1勝2敗)

敗戦投手 トレバー・リチャーズ(0勝2敗)

本塁打 ウィルソン・コントレラス(6号) / チャド・ウォーラック(1号)

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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