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中途半端な印象が拭えないイチローのセミリタイア

豊浦彰太郎Baseball Writer
少なくとも今季はもうプレーすることはない(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

メキシコはモンテレイでのパドレス対ドジャースの3連戦を観戦するためにいつもより早く起きて成田空港へ向かおうとしたら、ブレーキングニュースが飛び込んできた。イチローのセミリタイアである。

これは引退ではないらしい。今季はこのまま選手登録を外れ、GM特別補佐となる。しかし、チームには帯同し練習は続ける。来季の復帰の可能性はゼロではない。簡単にまとめるとこうなる。

なんとも微妙だと言わざるを得ない。この背景にあるのは、この稀代の名選手も加齢により戦力としてはもはやカウントできず、マイナーにジェイソン・ワースも控えていることを考慮すると、いずれ選手としては引導を渡さねばならないこと、イチロー自身はそれでも(おそらく)現役続行に強い意欲を見せており、入団会見で「最低でも50まで現役」とコメントしたばかりで球団の要請を受け入れ引退では引っ込みがつかないこと、来年春の日本での開幕戦が決まり営業面では何らかの形で彼に関わってもらう必要があること、などだろう。これらを総合的に妥協させた結果が、この中途半端な決断となったのだろう。

個人的には少々残念である。「最低でも50まで」の現役にこだわるなら、ここでマリナーズに解雇してもらいマイナーや独立リーグでプレーしながらもメジャー復帰の機会を伺って欲しかった。彼ほどの実績を誇るFuture Hall of Famerがそこまでやるならすごく立派なことで、その人生観や職業観に拍手を送りたいと思う。

しかし、成績が振るわなくてもレジェンド枠でプロテクトされていたり、来季の日本遠征の目玉として(だと思う)中途半端な役割を受け入れるのは、彼の孤高のスタンスとは相容れないと思う。

試合には出ないことが決まっているのに毎日ユニフォームを着て汗を流すということに、イチローはモティベーションを維持できるのだろうか。そんな不思議な行動を取る彼は再びチームで浮いた存在にならないのだろうか。おそらくは開幕前のプレシーズンマッチでだろうが、戦力ではなく集客の目玉になることに彼のプライドは傷つかないのだろうか。

少なくとも現時点で明らかになっている情報だけで判断すると、ロースターから外れるも引退ではない。正式な役割はGM補佐なのに、フロントオフィスメンバーとしてGMへの各種アドバイスを行うよりも毎日ユニフォームを着て汗を流す、このような立場を受け入れるのはダンディズムに欠ける、というのが率直な印象だ。

もちろん、人はだれでも自らの身の振り方を自分で決定する権利がある。何人たりともそれを冒すことはできない。しかし、イチローは自ら作り上げたイメージやその卓越したフィールド上のパフォーマンスにより、ファンに思い入れを持って語られるべき存在である。よって、ぼくなりの思い入れを持って今回の彼のセミリタイアを語ってみた次第だ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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