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泥酔・暴行は良くないが、だれが巨人 山口俊の立場を守るのか?

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

泥酔の果てに暴行事件を起こした巨人の山口俊は、予想通りと言うか、厳しい批判に晒されている。最終的にどのような処分が下されるのだろうか。

しばらく謹慎させた後に涙の復帰会見というのがソフトランディングに向けた巨人のシナリオかもしれない。しかし、同球団は野球とばく事件で世間の非難を浴びた。したがって、「コンプラ重視」を印象付けるために自由契約という事実上の解雇で処する可能性を示唆する記事も見られた。山口はDeNAからFA移籍してきた外様ということもあり、そう言われるとそれもありそうな気もする。

アスリートが酩酊するほど酒を飲むのは感心しないし、暴力行為には弁解の余地はない。少年少女に対するロールモデルであるべきプロ野球選手としての社会的責任も確かにあると思う。しかし、ここで是非とも望みたいのが、犯した過ちに対して過不足のない処分だ。

今回の一件は、被害者との間に示談が成立すれば最終的には不起訴となる可能性も十分あるだろう。個人的には、今後の野球人生が危機にさらされるほどのことではないと思う。その点からすると、現在の非読売系メディアの論調はややバッシングが過ぎると思う。また、長嶋茂雄さんの「巨人軍たる者・・・」という発言も、巨人の終身名誉監督という立場を考慮しても時代錯誤の印象が拭えない。

たとえ不起訴になっても、球界として処分を下すというのは大いにアリだと思う。しかし、これは本来一球団の判断に委ねられるべきものではなく、中立なNPB機構が事の重大さや社会的影響を考慮し、過去の不祥事などと照らし合わせ過不足ないペナルティーを決定すべきだ。球団が判断を独自に下すのは、選手の権利の保護の観点から感心しない。繰り返すが今回の山口の一件は愚かそのものだ。しかし、彼にも人権、生活権がある。それは守られねばならない。その意味では、山口の立場を守り、過剰な処分を蒙らないようにモニターする立場の組織、人物が必要だと思うし、それを本来担うべきは選手会だ。しかし、そのような動きはここまで見られないのは残念だ。

個人的には、処分を下すのは機構で、それに対し選手会が睨みを利かし、処分が不服であれば異議申し立てができる、これが理想だと思う。そのスキームがあれば、偏った判断が下される恐れを排除できると思う。

今回の「山口事件」を機に、処分のあり方に対する議論が湧き出て欲しい。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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