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レンジャーズ突如の快進撃で、ダルビッシュの夏場放出に「待った」?

豊浦彰太郎Baseball Writer
一時は「レンタル移籍にうってつけ」との見方もあったダルビッシュだが・・・(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

MLB2017年シーズンも各球団40試合以上を消化し、「勝ち組」と「負け組」の色分けが出始めている。もちろん、シーズンはまだ4ケ月以上残っておりこれからが本番なのだけれど、気の早い現地メディアではすでに夏場のフラッグディール戦線を睨み、だれが放出されそうか、予想に花が咲いている。

その中では、今季が契約最終年のダルビッシュ有(レンジャーズ)の動向には特に注目が集まっている。そんな状況に日本メディアも敏感だ。MLBを含む野球のポータルサイトFull-Countは、日本時間19日に米メディアFOXが夏のトレード市場での人気ランクでダルビッシュをトップとしたことをいち早く報じた。また、同サイトは今日は米メディアTrade RumorsがオフのFA市場でもダルビッシュがNo1評価であるとしたことを報じた

やはり、ダルビッシュを取り上げるとビューが伸びるのだろう。個人的には、Full-Countに限らず、自社による評価や見解が皆無で単に「現地メディアはこう報じている」というだけの記事を掲載するのは、プロのメディアの姿勢としていかがなものかと思うが、それは別の機会に論じたいと思う。

いずれにせよ、今月上旬時点ではダルビッシュは夏場に放出される可能性が高いと、多くのファンやメディアが見ていた。ぼくもその1人で、開幕からレンジャーズは出遅れ、5月頭にはダルビッシュと並ぶエース格のコール・ハメルズが故障で約2ケ月戦列を離れることが決定した時点では「ダルビッシュ放出の可能性高し」という主旨のコラムを掲載した。

しかし、その後状況は激変している。レンジャーズは、5月は最初の9日間は3勝6敗だったが、10日のパドレス戦から19日のタイガース戦までなんと10連勝を記録したのだ(20日は敗れ連勝はストップしたが)。おかげで、首位アストロズにはまだ6.5差ながら、現在ア・リーグ西地区2位で、プレーオフ進出の可能性は十分ある。

果たして、低迷から突如の快進撃に転じたことが、ダルビッシュの去就にも影響を与えるだろうか?

ぼくはYesと思う。過去2年連続地区優勝のレンジャーズだが、このオフにはダルビッシュと正捕手のジョナサン・ルクロイがFAになる。この2人とも引き留める(当然、長期大型契約が必要になる)のは難しい、というのが専らの見方だ。レンジャーズはすでにエルビス・アンドゥルスに残6年8800万ドルを、シンソ・チューにこの先4年8200万ドルをコミットしているからだ。さらに言うなら、昨季限りで事実上引退状態のプリンス・フィルダーにもあと4年間高額サラリーを支払わねばならないし、2021年オープンを目指す新球場の建設費用としても5億ドルを負担しなければならないのだ。

ここまで述べるとお分かりいただけるだろう。レンジャーズとしては悲願のワールドシリーズ制覇を狙うべきは、ダルビッシュもルクロイも揃っている今季しかない。

その夢も開幕からの低迷と5月頭のハメルズ離脱で潰えたかたに思えたが、ここに来て復調目覚ましいのだ。したがって、現時点で夏場でのダルビッシュ移籍の可能性を断ずるとすれば、ぼくは「否」と答える。

そのダルビッシュは、日本時間の明日22日に登板する。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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