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プエルトリコでのMLB公式戦開催「ジカ熱」で中止に その発表手法に見るコミッショナーのしたたかさ

豊浦彰太郎Baseball Writer
「ジカ熱でMLB公式戦開催中止」はプエルトリコの観光産業にも影響を与えそうだ。(写真:ロイター/アフロ)

現地時間5月6日、MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは、5月30-31日にプエルトリコのサンファンで予定されていたマーリンズ対パイレーツ2連戦の開催場所を、マイアミに移すと発表した。

このシリーズは、ロベルト・クレメンテ・デーとして開催されることになっていた。クレメンテは通算3000本安打を達成した名選手であり、1972年大晦日にニカラグア地震の被災者支援のため、救援物資を搭載した飛行機でサンファン空港を飛び立ったが、彼の乗ったチャーター機は間もなく墜落。帰らぬ人となった。今回の2連戦は、クレメンテの所属したパイレーツの訪問により、彼の故郷プエルトリコで開催されることに意義があっただけに残念だ(主催球団は、地理的要因もありマーリンズ)。

開催中止の理由は、中南米で感染者が増加している「ジカ熱」だ。

ここに来てプエルトリコでも死者が出たことで、選手や家族の間に渡航への懸念が広まったという。そこでMLB機構は、「心配な選手はこの遠征への参加を見合わせても良い」と通知したところ、主力級は軒並み不参加を表明し、プエルトリコでの開催自体を見合わせざるを得なくなったようだ。

実は、ぼくもこのシリーズを観戦するため、航空券やチケットの手配を済ませていただけに残念の極みだ(MLBの発表後、すぐに現地のプロモーターからチケット代金払い戻しの案内が来た)。

しかし、それにしても「MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーはしたたかだなあ」と思う。

「ジカ熱でサンファンでの開催中止」というネガティブな発表をした同日に、「将来のエクスパンション(球団拡張)の候補地としては、モントリオールとメキシコシティが有力」と同じ国際化戦略に沿ったビジネスネタのポジティブなトピックを被せてコメントしたのだ。

もちろん、この日マンフレッドはエクスパンションのみに関して語ったのではない。あくまで、広範囲にわたる各種の話題に関する記者会見での一部だ。しかし、この機会を逃さずわざわざ具体的な都市名まで挙げて残念な情報の相殺を図ったのは中々抜け目がない。

本来なら、エクスパンションに関し発言するとしても、不用意に具体的な都市名に触れるのは避けるべきことだ。しかし、都市名抜きのコメントではヘッドラインにはならないという計算があってのことだろう。

彼は「あくまでアスレチックスとレイズの新球場問題が解決した後の話だ」と前置きしたそうだが、逆に言えばその後はエクスパンションが既定路線で、その際はモントリオールとメキシコシティを選出することの根回しがかなり進んでいる可能性も感じるのだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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