20年神宮接収でヤクルトはドーム使用?野球&ソフト採用の暁には会場不足で球場建設とならないか?
東京五輪組織委員会が2020年5月1日から11月末まで神宮球場の使用中止を求めた問題で、一部夕刊紙がヤクルト球団が代替え地として東京ドームを使用する可能性を報じた。
確かにそれが現実的なソリューションかも知れない。しかし、五輪までまで4年もある。まずは本件のそもそもの問題点と本質的な解決策を考えてみたい。また、それに際しては「歴史ある神宮への敬意が足らない」とか「大学野球の聖地である」などの野球ファンにとって避けては通れないように感じる情緒的要素はぐっと我慢して、実務的観点のみから考察したい。
まず、なぜ今になってこの問題が提起されたのか理解に苦しむ。聞けば、資材置き場やボランティアの待機場所に使いたいのだという。そういう場所が必要だということは理解できるが、なぜ誘致計画の段階からそれがプランに組み込まれていなかったのだろう。
その視点が抜けていたとしたら、百歩譲ってそのことは目を瞑ったとしても、「広い場所が必要なのでその候補地として神宮を抑えたい」というのは短絡的であり、検討の順序が違うと思う。忘れてはならない。五輪まであと4年もあるのだ。新国立競技場のような「宮殿」でも建てようというなら話は別だが、聞けは神宮に建てようとしているのは比較的簡易な施設だという。それなら、国立競技場に比較的近いエリアで広い敷地が確保できる(かも知れない)湾岸エリアあたりで場所を探し、そこからの人と資材の効率的輸送手段を研究するというのがあるべき姿だろう。「近隣の施設をガバっと抑えちゃえ」という発想は、ビジネスプロセスとして間違っているし、「国家的事業のためなら民間は協力してしかるべし」というような政治家の傲慢が見え隠れし共感できない。そもそも神宮球場は、スワローズ主催試合のみならず、高校、大学を含めると、年間で90%以上という日本一の稼働率を誇る球場だが、野球に関心のない政治家には単なる空き地にしか見えなかったのだろうか。
冒頭紹介した記事では、ヤクルトの東京ドーム使用の可能性について言及しているが、東京ドームにしても巨人がロードに出ている時もコンサートやその他のイベントでの使用を前提にしているはずだ。そこにスワローズ戦や高校野球の地区予選、大学野球まで押し込む余地があるのだろうか。
最悪のシナリオは、現行の神宮球場での全ての野球イベントをドームに移動させる目処がついた後で、野球&ソフトボールの採用が決まるもドームにもはや余裕がなく「会場が足りない!2020年までに野球場を作れ!」となることである。
しかし、新国立競技場建設費用問題や今回の唐突な神宮球場接収宣言を見るにつけ、この冗談のような展開は決してあり得ないことではないように思えるところが怖い。