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熊崎コミッショナーは巨人の「声出し」を「賭博」と認め「処分を見送り」、それを「公表」すべきだった

豊浦彰太郎Baseball Writer
2020年 東京オリンピックプレビュー種目追加検討会議の際の熊崎氏(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

巨人などで行われていた「声出し」による金銭授受について、NPB委員会が昨年10-11月の時点で事実を把握していながら野球協約違反に当たらないという判断を下した件について書きたい。やはり、これは正しい対処ではなかったと思う。

新聞報道などをチェックすると、調査委員会や熊崎勝彦コミッショナーは「八百長、敗退行為を禁止する野球協約違反には当たらないと判断した」という。しかし、これは考察の順序として飛躍ではないか。1000円のやりとりが敗退行為に繋がるものと考えるかどうかは判断が分かれるところだが、これはそれ以前に賭博行為だ。声出し役が勝った際にもらうだけなら御祝儀とも言えるが、負けた際にグループ全員に支払う必要があるからだ。また。野球という競技に於いて、勝敗がその声出し役の奮起・活躍いかんに懸かっているとは考えられず、やりとりされたカネはインセンティブや罰金の類とは考えられない。また、賭博の定義に金額の多少は関係ないはずだ。

かと言って、この行為が球界への信頼を揺るがすほどのことかというとそれも疑問が残る。結局、この件に対する対処として適切なのは「賭博と認定する」、「ただし処分は見送る、または軽微なものとする」(コミッショナーが語る通り敗退行為に繋がるほどのものではないと考えるなら)、そして「それを公表する」ということだろう。どんなに少額でも賭けは賭けだ。ただし、悪質ではないものは起訴されないことも多いと思う。それと同じだ。

それを今回は「賭博」ではなく一足飛びに「八百長、敗退行為」を持ち出したことに非常に違和感がある。「賭博」を持ち出すと「クロ」とすべきという意見が主流となる可能性が高く、そうなると違法で協約違反となるためにそうしたのか?まず「お咎めなし」「公表なし」ありきの判断だったのでは?と勘繰られても仕方ない対処だ。

また、ここに来て巨人だけでなく阪神や西武でも同様の行為が行われていたと報道されているのは辟易とさせられる。この芋づる式ぶりは、数年前のホテルレストランでの食材偽装の発表連鎖を思い起こさせる。これを球界シバエビ事件と呼ぶべきか。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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