マエケンの契約で今後確認すべき「破棄条項」と「トレード拒否条項」、これがあれば前田完敗とは言えない

前田の契約には田中のような「破棄条項」が設定されているだろうか?(写真:ロイター/アフロ)

前田健太のドジャースとの契約に関する国内メディア各紙の報道が面白い。個人的には、保証額は8年2400万ドルで出来高が1000-1200万ドル/年という契約(FOXのクリストファー・メオーラ記者のツィートによるもの、これが事実かどうかはまだ確認されていない)は、完全にドジャースの勝利で前田は安く囲い込まれた印象が強い。

スポーツ報知は「格安感は否めないマエケンとドジャースの契約合意」とぼくの印象通りに報じていたが、東京中日スポーツのように「マー超え 最大8年契約か」と契約の長さをポジティブに捉えたものもあった。また、読売新聞は「右腕求めたドジャース」との見出しで、「希望の西海岸球団」で「相思相愛の関係」とこの契約を前向きに評価している。

契約内容は両当事者から何ら発表はない。メオーラのツィートを正とすると、この交渉はドジャースの完勝だが、そう言い切るには次の2点を確認する必要がある。

まずは、「オプト・アウト」(opt-out)の設定だ。これは、契約期間内の予め両者が合意したある段階で、選手が残りの契約を破棄してFAとなる権利の事だ。これは、FA市場の相場が年々高騰していることを踏まえ、近年一般的になりつつ付帯条項だ。田中将大のヤンキースとの7年1億5500万ドルの契約にも、4年目終了時にこれが設定されている。田中の年俸は2200万ドルという超高額だが、仮に田中が期待通りの活躍を見せ続けたとすると、4年目の2017年の終了時点では、2200万ドルも「割安」となる可能性もある。したがって、自分の力量と市場価値に自信があれば、オプト・アウトの権利を行使すると田中は2018年以降さらに高額な契約を手にすることも可能になる。

前田の契約に関しても、これが設定されていれば彼は8年間もドジャースに縛られることなく、ビッグマネーを求めてFA市場に打って出ることが可能になる。そうなると、保証額が低く出来高重視の長期契約も必ずしも一敗地にまみれた従属契約とは言えない。

もうひとつは「トレード拒否条項」の設定だ。西海岸球団を希望との報道があった前田なので、「こことこことここ以外のトレードはお断り」という文言が盛り込まれている可能性は高いと思う。もし、これがないとするとますますドジャース有利だ。将来ドジャースが編成上の理由で前田の放出を目論んだ場合、基本額が低くかつ長期に渡り拘束できる契約の前田はトレード市場での価値が上がり、より有望な交換相手を獲得できるからだ。

そんなことはないと思うが、もし「オプト・アウトなし」で「トレード拒否なし」だとするとこの交渉はドジャースの全面的な勝利とすべきだろう。

では、なぜ一方的な契約になったのか?真相は不明だが、他に交渉相手がなかった可能性は排除できない。だとすると、早い段階で「前田は西海岸球団が希望」とのニュースが流れたのは、前田陣営としては情報戦略上のミスだろう。西海岸以外の球団に対しても契約の意思をチラ付かせ「キープ」しておくことは、ドジャースを牽制する意味でも重要だったのではないか。こう言うと「ずいぶんずるいことを」と思われるかもしれない。しかし、それがビジネスだろう。